最新記事

EU

ドイツのメルケル政権、新たな連立枠組みでEU統合推進にブレーキか

2017年9月26日(火)08時48分

FDPは選挙綱領で、ユーロ圏の金融安定網である欧州安定メカニズム(ESM)の段階的廃止や、加盟国のユーロ圏離脱を認めるような形にEU条約を変更することを掲げた。クリスティアン・リントナー党首は、ギリシャに対して旧通貨ドラクマへの復帰を公然と呼び掛けている。

ある緑の党の議員はロイターに「こと欧州問題では、FDPはAfDと主張にそれほど差がない部分がある。FDPの考えが全て実行されれば、ユーロ圏危機が再燃してしまう」と懸念を伝えた。

メルケル氏の新政権にとってFDP以外にも厄介な問題がある。保守与党のパートナーでバイエルン州の地域政党、キリスト教社会同盟(CSU)は、難民問題で既にメルケル氏が率いるキリスト教民主同盟(CDU)と隙間風が吹いているが、今回のAfDの躍進を受けて来年のバイエルン州議会選でさらに右傾化してしまう可能性がある。

保守与党全体としても、AfDに流れた有権者を取り戻すことは重要な課題の1つであり、おのずと移民や欧州統合に関してより強硬な姿勢で臨む形になるだろう。

低い優先度

今回の選挙前でさえ、メルケル氏に近い何人かの関係者は、ユーロ圏改革を優先度の低い政策課題と位置付け、欧州の国境管理態勢やEU各国間の公正な移民受け入れ負担を確立する方が先だと主張していた。

あるドイツ政府高官は先月ロイターに「欧州にとってユーロ圏危機よりも難民危機の再来がより破滅的だ」と話した。

一方、ベルテルスマン財団が昨年実施した調査では、欧州の政治経済統合をさらに進める必要があると考えるフランス人の割合は41%と、EU平均を10%ポイント下回っている。

この調査では、マクロン氏が提案したユーロ圏財務相と予算について最も懐疑的だったのがドイツ人とフランス人だったことも分かった。ユーロ圏の予算導入がより経済が弱い国の支援に有効とみなしたフランス人は全体の31%、ドイツ人も39%にとどまっている。

(Noah Barkin記者)

[ベルリン 24日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、最優遇貸出金利据え置き 市場予想通り

ワールド

米大統領選、不公正な結果なら受け入れず=共和上院議

ワールド

米大統領補佐官、民間人被害最小限に イスラエル首相

ワールド

ベゾス氏のブルーオリジン、有人7回目の宇宙旅行に成
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中