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世界トップ5選出、グーグルが認めた「花まる学習会」アプリの力

2017年7月21日(金)18時02分
中川雅博(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

米グーグルが子供向けアプリの世界トップ5に選んだ、花まるラボの「Think!Think!」。親しみやすいデザインも特徴だ(記者撮影)

設立から3年、社員数わずか14人。小さなベンチャー企業の作ったスマホアプリが、子ども向け教育アプリで世界トップ5に入る快挙を成し遂げた。

東京大学本郷キャンパスの近くにオフィスを構えるベンチャー「花まるラボ」が作ったのが、「Think!Think!(シンクシンク)」というアプリだ。

米グーグルがアンドロイドスマホ向けアプリを対象に表彰を行う「グーグルプレイアワード」のキッズ部門で今年5月、世界中の候補の中からファイナリストの5つに選ばれた。ユーザーからの評価の高さやダウンロード数の伸び、さらに教育に対する理念などを含めて評価されたという。

大人でも難しい思考力育成ゲーム

シンクシンクは5~10歳の子どもを対象に、1問3分の迷路やパズルといったゲームを解いていくことで、思考力育成を目指す教材だ。アプリ内には40種類・5000題以上が収録されている。

ユーザー数は現在12万人。2016年3月に配信が始まり、最初の1年は月額1600円だったが、今年3月から一律無料化された。

たとえば、「はこになる?」という問題は、画面に表示された展開図が直方体になるかどうかを○か×かで答えるというもの。頭の中で自在に展開図を組み立てられる空間認識力を養う。子どもだけでなく、大人でも思わず考え込んでしまう問題も少なくない。親子で楽しめるアプリといえる。

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シンクシンクの問題の一つ、「はこになる?」。この展開図は折りたたむと箱になるか?(写真:花まるラボ)

実は開発元の花まるラボは、学習塾「花まる学習会」の運営企業、こうゆうの子会社だ。塾では「メシが食える大人にする」という教育理念を掲げ、単なる受験のための勉強ではなく、思考力を鍛える教材や授業を展開してきた。創業者の高濱正伸氏が開発した独自教材「なぞぺー」で知られる。

花まるラボの川島慶代表は、東京大学在籍時からアルバイトで学習会にかかわり、2011年にこうゆうに入社。以後、教室での指導と並行してなぞぺーなどの教材改良にも取り組んできた。また、社外の活動として「算数オリンピック」の問題作成・解説にかかわっている。

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花まる学習会が手掛けてきた教材「なぞぺー」(記者撮影)

だが、川島氏はふと考えた。「経済的な理由で学習会に通えない子どもたちにも、学べる機会を提供したい」。2014年、教材開発に特化した組織として花まるラボを設立。無料で、どこでも遊べる、そして紙よりも学習の継続性がありそうだと考え、アプリ開発に乗り出した。

「一度始めたらずっと楽しめる、自己肯定感も育めるアプリを作りたかった」。川島氏は、国内外の児童養護施設で教育に携わった経験もある。そこで感じたのが、教育格差は「意欲の格差」から生まれているということだった。

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