最新記事

教育

世界トップ5選出、グーグルが認めた「花まる学習会」アプリの力

2017年7月21日(金)18時02分
中川雅博(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

成功体験を積み上げていけば、意欲も上がっていく――。シンクシンクでは、アプリで遊ぶ子どもたち1人1人のレベルに合った問題を出す。メダルやポイント、ランキングといった仕組みも取り入れることで、子どもたちが「できた!」という感覚を持てるように開発したという。

一方で、こうしたスマホアプリに対しては保護者の間で「ゲームのようにやりすぎてしまうことはないか」という懸念がある。

そこでシンクシンクは1ユーザーのプレイ時間を1日3問、合計10分に制限している。「1日の1%にも満たない時間。短時間で子どもたちも没頭できるし、継続性が高まる」(川島氏)。

toyokeizai170721-4.jpg

3ゲーム終了後、「きょうもよくがんばったね!」というメッセージが流れる(写真:花まるラボ)

鍛えるべき思考力とは?

花まるラボでは鍛えるべき思考力として、5つの要素を上げている。「空間認識」、「平面図形」、「試行錯誤」、「論理」、「数的処理」だ。シンクシンクは、この中でも10歳までに大きく伸ばせるとしている空間認識、平面図形、試行錯誤の3分野を鍛える問題が主だ。

問題の制作にあたっては、まず花まるラボの社員がコンセプトを決め、東大生を中心とする40人のアルバイト学生を中心に、個々の問題作成やデザイン、プログラミングなどを行う。

最も人気があるのは「ラッキーバルーン」というゲーム。矢の方向を想像し、いくつか置かれている風船の中で割れないと思うものを選択する。適切な補助線を引く訓練になるという。2番人気は「とおる?」。提示された立体図形が、壁に空けられた穴に通るかどうかを○か×で答える。

toyokeizai170721-5.jpg

「ラッキーバルーン」のゲーム(写真:花まるラボ)

toyokeizai170721-6.jpg

「とおる?」のゲーム(写真:花まるラボ)

3番人気は「ひとふででんきゅう」だ。電池からすべての電球を一筆書きでつなげられるように指でなぞるというもの。電球が多くなればなるほど、一筆書きの道筋を考えるのに頭を使う。

現在は日本国内が中心だが、海外展開も進めている。タイ・バンコクではアプリを含めた教材を使った教室のフランチャイズを始めたほか、カンボジアでは社員の採用を行い、政府への働きかけなどによってアプリの活用を大きく広めたい考えだ。

グーグルプレイアワードでのノミネートが発表されてからは、就職の応募が増えたほか、企業からの提携の打診なども受けるようになったという。

「2020年には1000万ダウンロードを目指す。教育アプリでのフェイスブックやユーチューブのような存在になりたい」と壮大な野望を掲げる川島氏。盤石な親会社の後ろ盾を背に、猪突猛進を続ける。

toyokeizai170721-7.jpg

花まるラボの川島慶代表。小さなオフィスで大きな夢を描く(記者撮影)

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ

ワールド

米上院議員が戦争権限決議案、トランプ氏のイラン軍事

ビジネス

NTTドコモ、 CARTAHDにTOB 親会社の電
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中