最新記事

情報セキュリティ―

中国式ネット規制強化で企業情報がダダ漏れの予感

2017年6月12日(月)10時00分
ミレン・ギッダ

サイバーセキュリティー法の施行で外国企業の情報が筒抜けに? Bill Hinton Photography-Moment Open/GETTY IMAGES

<ハッキング対策のはずがハッキングを助長? 対中ビジネスの「代償」にご用心>

中国は自国のサイバーセキュリティーに問題があることを以前から自覚していた。13年6月には米国家安全保障局(NSA)の元職員エドワード・スノーデンが、NSAは香港や中国本土も含め世界中で6万1000件のハッキングを行っていると香港紙に暴露した。

これを受けて、中国では現地に進出している米IT企業に対する疑念が広がった。米ネットワーク機器大手シスコシステムズの受注は同年8~10月期、前年同期に比べ18%減少。中国政府は企業に国産の通信機器を使うように要求し、サイバーセキュリティーを強化する計画を練り始めた。

今月1日、中国初のサイバーセキュリティー法が施行され、中国でビジネスをする外国企業を取り巻く状況ははるかに厳しくなりそうだ。新法では、中国国民の安全に関わる情報を保有する「極めて重要」な企業が中国で収集したデータは、全て国内で保管しなければならない。政府はこうした重要企業のデータシステムも再調査して安全性を確認する構えだ。

それ以外の企業でも、国家や国民に関するデータは国内のサーバーに保管しなければならない。大量のデータを国外に移転する場合は事前に当局の許可が必要になる。

中国で事業展開する多国籍企業にとっては新たなコストが発生する。データをまだ国内に保管していない企業は中国の有償クラウドサービスを利用しなければならない。

【参考記事】「パスワードは定期的に変更してはいけない」--米政府

だが最大の懸念は別のところにあると、ロンドン大学東洋アフリカ学院・中国研究所のスティーブ・ツァン所長は言う。「大手多国籍企業にとっては大したコストではない。企業が懸念しているのはむしろ、中国当局が外国企業のデータを入手する強力な法的根拠を手にする可能性だ」

ツァンによれば、自社の知的財産を詳細まで調べられるなど、中国当局が大量の情報にアクセスできるようになることを懸念する企業もあるという。中国は以前から他国の技術やアイデアを盗用してきただけになおさら気掛かりだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物続伸し3%超上昇、イラン・イスラエルの攻撃

ビジネス

ECB、2%のインフレ目標は達成可能─ラガルド総裁

ワールド

トランプ氏、イラン・イスラエル和平を楽観視 プーチ

ワールド

ネタニヤフ氏、イランの体制崩壊も視野 「脅威取り除
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中