最新記事

テロ

ノートPCの持ち込み禁止はISISの高性能爆弾のせいだった

2017年6月13日(火)15時00分
カラム・ペイトン

ISISがノートパソコンのバッテリーに見せかけた爆弾を作った(写真はイメージ) Srdjan Zivulovic-REUTERS

<イスラエルからアメリカに渡り機密扱いになっていたのは、ノートパソコンのバッテリーを偽装しX線検査を欺く爆弾を使った航空機爆破計画>

イスラエルがテロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)に対して行ったハッキング攻撃で、シリアに拠点を置くISISの爆弾製造班が、高性能爆弾を組み込んだノートパソコンを使って航空機の爆破を計画していたことが明らかになった。イスラエルからアメリカに渡り、トランプがロシアに喋ってしまい、一方で一部中東諸国発アメリカ行きの航空機にノートパソコン等の持ち込みが禁止になっているのはこのためだった。

ニューヨーク・タイムズ紙の報道によれば、こうしたきわめて重大な情報の発見は、ISISに対するサイバー活動で成功した数少ない事例だ。この情報はのちの5月に、アメリカのトランプ大統領からロシアにリークされている。

匿名の当局者の話によると、イスラエルが得たこの情報は精細で質が高く、米当局が爆弾がどうやって起爆するかをはっきりと識別できるほどだったという。ISISの爆弾製造班は、空港のX線検査を欺き、ノートパソコンのバッテリーと誤認されるような爆発物を設計していた。

3月21日にアメリカ国土安全保障省(DHS)から指示が出たのを受けて、ヨルダン、エジプト、クウェート、モロッコ、カタール、トルコ、サウジアラビアならびにアラブ首長国連邦の10空港でセキュリティーの強化策がとられており、アメリカ直行便へのノートパソコンをはじめとする電子機器の機内持ち込みが禁止されている。

【参考記事】テロ警戒、米トランプ政権が電子機器の機内持ち込み禁止へ
【参考記事】ロイヤル・ヨルダン航空、米の電子機器禁止に神対応

DHSはさらに、脅威の深刻さを考慮し、電子機器持ち込み禁止をヨーロッパ各地の空港にも拡大することを一時的に検討していた。

トランプがペラペラと

ワシントン・ポスト紙によると、この情報は極秘だったが、5月10日にトランプがロシアのセルゲイ・ラブロフ外相ならびにセルゲイ・キスリャク駐米大使と会談したときに話したため公になった。

【参考記事】トランプ、最高機密をロシア外相らに話して自慢

この情報がイスラエルからもたらされたということはのちに明らかになったが、当初は、ハッキングではなく情報筋から得られたと考えられていた。もし情報を盗んだのがイスラエルの情報員だと発覚すれば、命も危うくなるところだった。

ニューヨーク・タイムズ紙の報道によれば、アメリカはインターネット上におけるISISの活動を妨害するためのサイバー攻撃を実施しているが、過去12カ月間は大した成果を上げていない。国防総省は2016年に、ISISに対して新たなサイバー攻撃を行っていると明らかにしたが、ISISのプロパガンダや新兵募集、兵士への給与支払い、命令の発信などを阻止できずにいる。

2017年3月までアメリカ国家安全保障会議(NSC)の反テロリズム担当シニアディレクターを務めていたジョシュア・ゲルツァーは、国防総省のサイバー攻撃には失望の声が上がっている、と話す。

「(サイバー攻撃は、)実際には、一般的に考えられているよりもずっと難しい。システムに侵入できさえすれば情報を永久に消してしまえると考えているだろうが、そんなに簡単にできることはまずない」とゲルツァーは述べている。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

26年度の超長期国債17年ぶり水準に減額、10年債

ワールド

フランス、米を非難 ブルトン元欧州委員へのビザ発給

ワールド

米東部の高齢者施設で爆発、2人死亡・20人負傷 ガ

ワールド

英BP、カストロール株式65%を投資会社に売却へ 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中