最新記事

米社会

アメリカ人も有給休暇を取りづらい 最新調査で明らかに

2017年5月31日(水)17時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

piola666-iStock.

<世界的にみて日本人は有給休暇の消化率が低いが、実はアメリカ人も似たようなもの。しかも、若い女性ほど休みを取りにくいと感じている>

アメリカ人はあくせく働かず、優雅にバケーション三昧――その昔、こうしたイメージを持っていた人もいるかもしれない。だが、最近は「優雅に長期休暇」というわけでもないようだ。最新の調査結果で、アメリカ人も有給休暇を取りたくても取れない実態が明らかになった。

調査をしたのは、全米旅行協会。同協会が先週発表したレポートによると、週の勤務時間が35時間以上で「有給休暇」のある18歳以上のアメリカ人7331人を対象にした調査で、昨年の間に与えられた有給休暇の日数は平均22.6日間。そのうち、実際に消化された有給休暇日数は平均16.8日だった。これは、1976~2000年の平均だった20.3日に比べると格段に少ない。

実はアメリカは、先進国の中で唯一、年次有給休暇を取得する権利が法律で保障されていない。

例えば日本では、入社から6カ月経過し全労働日の8割以上出勤した労働者に10日の有給休暇を与えることが労働基準法によって義務付けられており、勤続年数を重ねるごとに日数が増え、入社後6年6カ月以降は合計20日の有給休暇が与えられる。

一方、有給休暇の取得が「権利」ではないアメリカでは、休暇を取った際に賃金を支払うかどうかは雇用主次第だ。米労働省は「公正労働基準法は、バケーションや病欠、連邦祝日やその他の祝日など、働いていない時間に対する賃金支払いを義務化していない。こうした手当は、雇用者と被雇用者の間の契約事項である」と述べている。

2013年の調査では、アメリカの労働者の4人に1人は有給休暇や有給の祝日をまったく得られていなかった(ちなみに日本の国民の祝日は16日間であるのに対し、アメリカの連邦祝日は10日間と、アメリカはそもそも休み自体が少ない)。

もちろん、アメリカでも有給休暇を福利厚生として認めている企業は多い。しかし最新の調査結果で分かったことは、多くのアメリカ人が有給休暇を「消化しにくい」と考えていることだ。

休みを取りにくい理由として、全米旅行協会の調査に対し、26%の人が休暇を取ると「仕事に献身的でないと思われそう」と回答。23%が「自分の代わりがいると思われてしまう」、21%が「昇給や昇進のチャンスを逃すかも」と答え、自分のポジションへの影響を不安視していることが分かった。

仕事に「献身的」だと思われたいから、休みを取れない――そう思っているのは、1980~2000年頃に生まれたミレニアル世代の女性に特に多いことも分かった。

この世代で、昨年すべての有給休暇を使い切ったと答えた人が男性では51%、女性では44%と、女性のほうが休暇に対するハードルが高い。ミレニアル世代では、男性に比べてより多くの女性が休暇を取ることに「罪悪感」を感じたり、「代わりがいると思われる」ことを恐れていると回答している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中