最新記事

貿易

APEC、共同声明見送り 保護主義巡り米国との対立が鮮明に

2017年5月23日(火)11時18分

5月21日、ベトナムの首都ハノイで開かれたAPEC貿易相会合は、米国と他の20カ国の保護主義に関する意見対立が浮き彫りとなり、共同でまとめる閣僚声明の採択が見送られた。写真は21日、会合後の合同記者会見に出席したライトハイザー米USTR代表 代表撮影(2017年 ロイター)

ベトナムの首都ハノイで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合は、米国と他の20カ国の保護主義に関する意見対立が浮き彫りとなり、共同でまとめる閣僚声明の採択が見送られた。就任後初の国際舞台に臨んだライトハイザー米通商代表部(USTR)代表としては、トランプ政権が打ち出している「公正な貿易」という土俵に他国を引っ張り込むことができなかった。

ロイターが入手した閣僚声明案の論点を記した文書によると、米政府は「保護主義の潮流が世界経済の回復と経済統合の過程に重大な影響を及ぼしかねない」との言い回しを挿入することに反対。むしろ「貿易不均衡につながる不公正な貿易」があると言及することや、「自由かつ公正な」貿易を保証するためにいくつかの障壁を取り除くべきだとの要求を盛り込みたい意向を示した。

結局、閣僚声明はまとまらずに議長声明のみが発表され、意見が一致しなかったことが特記された。もっとも議長声明は、米国が求めた当初閣僚声明案の変更をほとんど無視しており、「あらゆる形の保護主義と対抗する」とうたっている。

こうした文書採択を巡る駆け引きは、先進7カ国(G7)や20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議でも似たような展開が見られた。

交渉に参加したある当局者は「米国は『保護主義』という言葉を声明に入れるのを嫌ったが、他の20カ国が盛り込むことを希望した」と打ち明け、米国側は「多国間」貿易システムを「国際間」と置き換えることを望んだと付け加えた。

ライトハイザー氏は、声明文を巡る意見対立について質問を受けると、米国の自由かつ公正な貿易に向けた取り組みが保護主義と混同されていると主張。「これは不幸な事態だ。われわれは自由な貿易、公正な貿易、世界全体で市場の効率性が高まるシステムを希望している」と語った。

(A. Ananthalakshmi、My Pham記者)

[ハノイ 21日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド中銀総裁「低金利は長期間続く」=FT

ビジネス

シャドーバンキング、世界金融資産の51% 従来型の

ワールド

ロシア財政赤字、2042年まで続く見通し=長期予測

ワールド

スーチー氏の健康状態は「良好」とミャンマー軍政、次
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中