最新記事

北朝鮮

中国、絶体絶命か?――米議会までが中国に北への圧力強化を要求

2017年4月4日(火)18時18分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

Q:中国がもっと北への経済制裁を強化すれば、北は核やミサイルの開発をできなくなるのではないか?

A:中国はすでに十分にやっている。もし食糧危機にまで追い込んだら北は自暴自棄になる。北の核開発基地は中国と160キロしか離れていない。中国が受ける被害がどれだけ大きいか、考えれば分かることだ。

Q:しかし、このままいけば北朝鮮の思うままになってしまうのではないのか?

A:北はアメリカに振り向いてほしいのだから、アメリカが対話のテーブルに戻るべきだ。それに、中国人民解放軍の北部戦区の軍隊は北朝鮮国境に集中している。北朝鮮の思うようにはさせない。

Q:ロケット軍もか?

A:そうだ。

Q:北朝鮮と戦うつもりなのか?

A:そんな詳細など、言えるはずがないだろう。ともかく北朝鮮は脅威を感じているはずだ。

Q:ところで、もし米中首脳会談の最中に北がミサイルを発射したら、中国はどう対応するか?

A:強烈な抗議声明を出すだろう。それ以上のことは、今はなんとも言えない。

米下院決議が米中首脳会談に与える影響

米下院の外交委員会は3月29日、北朝鮮への圧力強化に向けて、北朝鮮のテロ支援国家再指定を求める超党派の法案と大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発を非難する決議などを可決している。さらに4月3日、米下院は本会議で、「中国に北朝鮮への圧力強化を求める決議」を採択した。これは4月6日から始まる米中首脳会談に際して、中国側をけん制することを目的としたものであることは明らかだ。

トランプ大統領の「いざとなったら、アメリカ単独で」発言に関しては「また、例のトランプ砲だ」と高をくくることはできても、米議会の決議となれば、いくら中国でも無視することはできまい。

たとえトランプ大統領が習近平国家主席をフロリダの別荘でもてなしたとしても、「安倍・トランプ」会談のようにはいかないだろうことは明らかだ。

中国がどんなに威勢のいいことを言っていたとしても、中国が退路のない、絶体絶命の崖っぷちに追い込まれているのを否定することはできないのではないだろうか。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中