最新記事

アメリカ政治

トランプの硬軟使い分け、企業トップが見た大統領「裏の顔」

2017年3月14日(火)10時41分

 3月8日、製薬大手6社のトップがトランプ米大統領に会うためワシントンに向かった1月、それが険悪な雰囲気の会談になり得る材料はすべて揃っていた。写真は1月31日、ホワイトハウスで製薬業界のトップと会談するトランプ大統領(2017年 ロイター/Yuri Gripas)

製薬大手6社のトップがトランプ米大統領に会うためワシントンに向かった1月、それが険悪な雰囲気の会談になり得る材料はすべて揃っていた。

その数週間前、トランプ大統領は、医薬品価格があまりにも高く、製薬会社は「殺人を犯しているのに罪を免れている」と非難して、製薬各社の株価を急落させていた。

ところが、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)や、ノバルティス、メルクを含む大手製薬の最高経営責任者(CEO)たちを迎えたトランプ大統領は、驚くほど愛想よく振る舞い、自らホワイトハウスの執務室を案内して回ったと、その朝食会に参加した数人が語った。

「それが険悪になる可能性はあったし、私たちもそうなるのではないかと考えていたが、それに比べたらはるかに良い会合だったのは確かだ」とこの会合の状況に詳しい業界関係者は語った。

トランプ大統領は、製薬業界への公然とした攻撃を繰り返さなかった。その代わり、製薬各社のコストを押し上げている「時代遅れの」規制に焦点を当てたという。製薬会社のCEOたちは、規制緩和と米国の割高な法人税率を変えるという大統領の言葉を土産に持ち帰った。

1月20日大統領に就任して以来、トランプ氏は自動車、航空、小売、医療保険といった業界リーダーたちと少なくとも9回の会合を行なった。8日にも、トランプ氏はニューヨークの不動産開発会社や、プライベートエクイティのトップたちと昼食会を催した。そこではインフラ整備に関する官民協力の可能性が議論される見込みだという。

早朝や深夜のツイート投稿や演説のなかで、トランプ大統領はこうした企業の多くに関して、彼らのコスト超過、高価格、海外での生産活動を非難し、幾度となく企業株価に悪影響を与えていた。

しかし、大統領との会合に出席あるいはその報告を受けた10数人近い企業幹部やロビイストをロイターが取材したところ、妥協せず厳しい要求をする大統領のツイートアカウント@realDonaldTrumpとは非常に異なるトランプ像が浮かび上がってきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中