最新記事

ライフスタイル

ブレグジットの不安は「わび・さび」が解消? 2017年流行語の声も

2017年3月13日(月)15時15分
松丸さとみ

日本国語大辞典では、侘びを「簡素の中にある落ち着いたさびしい感じ」と、寂は「古びて枯れたあじわいのあること」や「閑寂な趣のあること」などと説明している。

「わび・さびはたわ言」

しかしテレグラフは、「わび・さびなんてたわ言」だと主張する声を掲載した。著者のマイケル・ホーガン氏は記事の中で、わび・さびの信奉者がジェシカ・アルバさんやブラック・アイド・ピーズのラッパー、ウィル・アイ・アムさん、そしてジャック・ドーシー氏と「簡素な生活」とは無縁そうな金持ちばかりであることを指摘。「既存の哲学を再び綺麗にパッケージして、21世紀が抱える問題の解毒剤として売り込んでいるだけ」と主張している。

さらに、「ヒュッゲの次に来るのはlagom(ラーゴム)じゃなかったのか?」と疑問を呈した。というのも、今年1月の時点で女性誌のエルやヴォーグなどがこぞって「ヒュッゲの次はラーゴム」と取り上げていたのだ。ラーゴムは「ちょうどいい」を意味するスウェーデン語だ。

ホーガン氏は、英国人はどうやらブレグジットのこの時期に、芝生がより青く見える外国の文化から、「いかに生きるか」の指針を見出そうとしているようだ、と指摘。ヒュッゲもラーゴムもわび・さびも、果ては数年前から英米で大流行している近藤麻理恵氏のお片付け術も、すべてもっと物を買わせようとしているだけの無駄なものだ、と一蹴している。

【参考記事】こんまりの魔法に見る「生と死」

わび・さびと失業手当の関係

デイリーメールとテレグラフの読者コメント欄には、ホーガン氏と同じく「金持ちが簡素な生活とか言っても説得力ない」という意見が目立つ。「英国で侘び寂びに相当するものといえば失業手当」と言った声や、「デンマークでは外食が高価だから自宅で飲んで時間を過ごすヒュッゲという考えが生まれただけ。英国も最近は外飲みが高くつくからヒュッゲが流行ったというだけ」と言った指摘などもあった。

日本大百科全書には、わびは「貧粗・不足のなかに心の充足をみいだそうとする意識」とある。つまり「英国でわび・さびに相当するのは失業手当」という冗談も、あながち的外れな話ではないかもしれない。ブレグジット後の英国経済によっては、わび・さびを楽しむ心の余裕がもっと必要になる日が来るのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 2

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子供を「蹴った」年配女性の動画が大炎上 「信じ難いほど傲慢」

  • 3

    あまりの激しさで上半身があらわになる女性も...スーパーで買い物客7人が「大乱闘」を繰り広げる動画が話題に

  • 4

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 5

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 5

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 9

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中