最新記事

米外交

来日したティラーソン米国務長官、同行記者1人、影響力なし

2017年3月17日(金)06時52分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

3月15日夜、羽田空港に降り立った際のティラーソン米国務長官 Toru Hanai-REUTERS

<北朝鮮の核・ミサイル問題が差し迫るなか、来日して外相会談を行ったティラーソン米国務長官だったが、同行した記者はなぜか1人だけ>

知らなかった人もいるかもしれないが、レックス・ティラーソン米国務長官が3月15日に来日した。トランプ政権の外交を担う要人の初来日であり、北朝鮮の核・ミサイル問題が差し迫るなか、日中韓を歴訪する意義は大きい。16日に岸田文雄外相と会談したティラーソンは、17日に次の目的地ソウルへ向かう。

だが日本では、ティラーソン来日がさほど大きく報じられなかった。おそらく理由の一端は、安倍政権を直撃している「森友学園」問題にあるだろう。新聞でもテレビでも連日トップニュースの扱いだ。

一方、アメリカ側でも別の理由で、ティラーソンのアジア歴訪にあまり注目が集まっていない。その理由とは、報じる記者が"いない"ことだ。

実は今回の外遊に、記者は1人しか同行していない。スレートによれば通常、10人かそれ以上の記者が同行するのに、前代未聞の事態だ。

先週の時点では、同行記者団を帯同させない計画だと報じられていた。「0人」である。当然、米メディアは反発。結果的に記者を同行したわけだが、たった1人。ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官は、経費節約のためだとティラーソンを擁護していたが、同行記者は料金を払うものだ。

となれば記者を帯同させない理由は、トランプ政権のメディアとの敵対姿勢にあると推測される。一部の主要メディアを「国民の敵」と呼ぶドナルド・トランプ大統領は、2月にはホワイトハウスの定例記者会見からCNNやニューヨーク・タイムズなどを締め出した。

その際はトランプ政権の方針に抗議するため、出席できたのに会見を欠席したメディアもあった。今回のアジア歴訪で、1社だけと知りつつ同行に同意したのは、一体どのメディアなのか。

インディペンデント・ジャーナル・レビューって何?

「インディペンデント・ジャーナル・レビュー(IJR)」というニュースサイトだ。ロサンゼルス・タイムズによれば、2012年の選挙で共和党全国上院委員会のメディアディレクターを務めたアレックス・スケーテルという人物が立ち上げた保守系のメディアである。

そのホワイトハウス特派員であるエリン・マックパイクが今回、ティラーソンの専用機に同乗している。マックパイクはCNNやNBCニュースなどでキャリアを積んでいるが、選挙報道を主に担当してきた記者だとロサンゼルス・タイムズは書く。外交を専門とする記者ではない。

出発直前の15日、米国務省の記者会見でマックパイクの独占取材について質問された広報官は、「米メディアのより幅広い代表」に機会を与えるためだと説明した。「新しい読者だ」「保守的な読者か? 友好的な読者か?」「新しい視点だ」――といったやり取りが記者との間であった。

しかし今回、マックパイクは取材内容を他のメディアと共有する「代表取材」の立場ですらない。その責務のない彼女が書く記事はおそらく、自身の所属するIJRにしか載らないだろう(日本時間16日23時現在、アジア歴訪の記事はまだ1本も同サイトに掲載されていない)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中