最新記事

電子書籍

マイクロソフトがWindowsで電子書籍を販売へ。アマゾンの独占はどうなる?

2017年1月20日(金)16時30分
鎌田博樹(EBook2.0 Magazine)

<米マイクロソフトが、Windows Storeで電子書籍の販売を始めることが報じられた。同社はアマゾンより早く電子書籍ビジネスを立ち上げようとしたパイオニアで、もともと関心がないわけではない>

 マイクロソフトが、4月にもWindows Store でE-Bookの販売を始めることが報じられた。昨年末にEPUBに対応したばかりのEdgeブラウザがリーダとなる。100万点あまりからスタートする予定で、キュレートされたベストセラー・タイトルとともに提供される。すでに販売されている音楽、ビデオ、アプリに続くコンテンツとなる。

期待できること、できないこと

 Microsoft Storeでコンテンツを購入し、Edgeで読むというスタイルは、Windows 10 Mobileのほか、Windows 10を搭載したPCやタブレットで利用できる。Windows Storeには専用のE-Bookセクションが設けられ、アプリを買うのと同じ感覚でE-Bookをダウンロードできる。EdgeでのEPUBサポートにより、ブックマークの使用や目次の表示、Viewerのテーマのカスタマイズ、フォントサイズの変更、フォント・ファミリーの適用が可能。米国以外でのストアの立上げについてはまだ情報がない。

 メディア・プラットフォームを擁するアマゾン、アップル、GoogleがいずれもE-Bookを含むコンテンツ商品を販売しているのに対して、マイクロソフトだけがE-Bookセクションを欠落させていた。同社はアマゾンより早くE-Bookビジネスを立ち上げようとしたパイオニアで、もともと関心がないわけではない。おそらくバーンズ&ノーブル/Nookとの関係(解消)が影響したものと思われる。大メーカーのコンテンツ・ポリシーは、消費者やクリエイターの期待と離れたところにあるのが残念なところだ。単純に、彼らにとってE-Bookなどは市場として小さすぎるのだ。

 アマゾンの独占は他の3社の無関心の結果だ。それは崩れそうもない、本誌がつねに強調するように、本は(他のすべての商品にも増して)消費者の深いコンテクストを提供してくれるもので、アマゾンはそれをコマースにおける競争力の源泉としている。他方で3社が重視する「音楽、ビデオ、アプリ」は、マス・マーケット商品である。デバイスやOSを押さえてボトルネックとすることで、ホームグラウンドで効率よく一定の収入が確保できるので、マルチプラットフォームにする動機が薄くなる。ユーザーにとって選択肢があるのはよいことだが、彼らがアマゾンの真のライバルになることはない。

 ただし、傘下のマイクロソフト・プレスが、Microsoft Storeをプラットフォームとして活用して先進的なソフトウェア技術書出版をやる気があるのであれば、話は違ってくる。そこではコンテンツの売上以上の、同社の製品・サービスの拡大のための出版プロジェクトというインセンティブが働いてくるからだ。これは商業出版物の販売などよりも大きな意味を還元してくれるだろう。同社は言うまでもなくテクノロジー企業である。筆者はマイクロソフトが先進的な企業/教育出版の分野で、技術的にもサービス的にも市場をリードする存在になることに期待している。

○参考記事
Leaked Windows 10 build shows Microsoft filling a major content hole: Ebooks, By Mark Hachman, PC World. 01/17/2017
First look at Windows 10's upcoming store for e-books, by Mehedi Hassan, MS Power User, 01/17/2017
Microsoft to Sell eBooks?, by Nate Hoffelder, The Digital Reader, 01/17/2017


※当記事は「EBook2.0 Magazine」からの転載記事です。

images.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏ロレアル、第1四半期売上高は9.4%増 予想上回

ワールド

独財務相、ブラジルのG20超富裕層課税案に反対の意

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米金利上昇で 半導体関連

ビジネス

FRB当局者、利下げ急がない方向で一致 インフレ鈍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中