最新記事

中国軍事

中国、次は第二列島線!――遼寧の台湾一周もその一環

2017年1月12日(木)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国空母「遼寧」 南シナ海で初の発着艦訓練 Mo Xiaoliang-REUTERS

 1月8日、人民日報や国営テレビCCTVが「次に狙うのは第二列島線、東太平洋だ!」と一斉に報じた。第一列島線における中国海軍の活動はすでに常態化し、第二列島線は時間の問題で、空母・遼寧は「オタクではない」と。

第二列島線を制覇するのは時間の問題

 中国共産党の機関紙「人民日報」と中国の国営テレビCCTVは、ほぼ同時に「中国の空母・遼寧は、遅かれ早かれ第二列島線に出航し、東太平洋に達する!」と報道した。

 昨年12月23日、空母・遼寧はミサイル駆逐艦3隻、フリゲート艦2隻を伴って渤海湾を出発したあと、黄海や東シナ海で空中給油や艦載機発進に関する軍事演習などを終えたあと一気に南下し、25日に沖縄県の沖縄本島と宮古島の間に位置する宮古海峡を通過して、西太平洋に進出した。その後、台湾を囲い込む形で、台湾南部とフィリピンの間にあるバシー海峡を経由して南シナ海に出た。台湾と大陸の間にある台湾海峡を通らず、バシー海峡を通る形で西太平洋に進出したのは初めてである。

 このとき台湾海峡を通らずバシー海峡を通ったことが重要で、これはトランプ次期大統領が12月11日に「必ずしも『一つの中国』原則に縛られない」という発言に対抗したもので、「台湾は中国の一部」という「一つの中国」を見せつけるためのシグナルであった。

 南シナ海に入った遼寧は、中国海南島の軍事基地に寄港し南シナ海でも艦載機の離着陸訓練を実施したあと、1月11日には台湾海峡を通って母港の青島(チンダオ)(山東省)に向けた帰路についている。中国メディアは、「南海での訓練のあと、台湾海峡を通って青島軍港に戻るのに、いかなる問題があるのか」と伝えている。

 現象を見れば、台湾をぐるりと一周したことになる。

 トランプ次期大統領が「一つの中国」原則を破れるものなら破ってみろ、と言わんばかりだ。

 これに先がけて中国共産党系のメディアは、一斉に「第一列島線における空母の活動はすでに新常態化しており、次は第二列島線を狙う」と宣言したわけだ。そして次は東太平洋に進出するとしている。したがって第一列島線付近をあちこち動くのは「常態」なのだということだ。北上したあと、また、戻ってくるのかもしれない。

 「これ」をご覧いただきたい。

 そこには「航母不是"宅男"」という文字(8行目)があるのを確認して頂けるだろうか?

 これは直訳すれば「空母(遼寧)は"宅男ではない"」という意味で、"宅男"とは「お宅(オタク族)」という意味である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中