最新記事

米中関係

米中断交さえ!? 台湾総統の米国経由外交

2017年1月10日(火)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中米歴訪の台湾総統が経由地のヒューストンに到着 James Nielsen- REUTERS

 蔡英文総統の米国経由による中米訪問に対し、北京は米共和党議員に蔡総統と会わないよう警告。中国共産党系新聞環球時報は米中国交断絶さえちらつかせた。しかし蔡総統はトランプ陣営シンクタンクとも会っていた。

「過境外交」――中国が「蔡英文と会うな」とクルーズ議員に警告

 台湾の蔡英文総統は8日、台湾と国交のあるホンジュラスやニカラグアなど中米4カ国訪問の際、米テキサス州ヒューストンに立ち寄った。中国では李登輝元総統や陳水扁元総統時代と同じく、台湾の指導者が中米訪問を口実に米国に立ち寄ることを激しく批判し抗議してきた。

 中国語でこの現象を「過境(guo-jing)外交」と称する。

「境」は「国境」の意味で、「国境を渡る際に、通過する国に着陸して外交を展開する」という意味だ。

 特に今回は、なんといってもトランプ次期大統領が昨年「禁断の電話会談」をした相手の蔡英文総統。北京政府は早くから「トランプ陣営が蔡英文と会ったりなどするものか」という報道を続け、警戒音を鳴らし続けてきた。

「共和党議員だって会いやしないさ。でも同情などすることはない」などと発信していたのだが、共和党のクルーズ上院議員など多くの共和党関係者が蔡英文総統と会談したことが明らかになった。台湾の民進党寄りの「自由時報」が、9日、詳細を伝えた。

 クルーズ議員は、昨年の米大統領選において共和党候補指名争いに出馬していたテキサス州選出の上院議員だ。クルーズ議員は会談後、中国側から「蔡英文と会ってはならない」という警告の書簡を会談前に受けていたことを明らかにした。

 どうりで、北京が早くから「共和党議員にさえ会えやしないさ」と報道していたわけだ。脅しが効くと思っていたのだろう。

 ところが、そんな米国では、もうなくなっていた。

クルーズ議員、北京政府を牽制

 クルーズ議員はさらに、以下のように述べて北京政府を牽制した。

 ●中華人民共和国は、アメリカにおいて、われわれがどの訪問客と会うかに関しては、われわれ自身が決めるのだということを知るべきだ。

 ●これは中華人民共和国と関係のないことで、米国と台湾の問題であり、法律上、われわれが防衛義務を負っている盟友との問題である。

 ●蔡英文総統と会談できたのは非常に光栄なことだ。われわれは、共同のチャンスと広範囲な討論を通して、米台双方の関係を高め、武器売却や外交交流および経済関係に関して話し合った。

 ●蔡英文総統との協力を深め、仲間としての関係を高めていきたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

モルガンS、米株に強気予想 26年末のS&P500

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機「ラファール」100機取得へ 

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 120億ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中