最新記事

ベルリンテロ

メルケルの寛容にテロがとどめ?

2016年12月21日(水)17時45分
ジョシュ・ロウ

 かねてCSUは難民の受け入れ人数に上限を設けるよう訴えてきたが、メルケルは強硬に拒んできた。彼女に批判的な勢力は同じ主張を再び持ち出してきそうだと、ニッケルは言う。

 すでにメルケルは、右派に譲歩する姿勢を見せている。今年1年を通じて、ドイツに入国する移民の数を抑制するよう取り組んできた。トルコ経由でEUに入ってきた難民や移民をトルコに送還するという合意を取り付けたのも難民減らしの一環だ。今月6日にエッセンで開かれたCDUの党大会では、ドイツ国内でイスラム教徒の女性が身に着けるニカブやブルカなど顔を覆うベールを着用禁止にすることも支持した。

極右に政権はとれない

 メルケルの強みは、異なる立場の間で上手くバランスを取れることだ。折に触れて難民保護や治安強化を図りつつ、他方では広範な支持を確保する「実利主義に基づく中道」の手法だ。その点AfDには与党として国を率いる可能性がないし、極右に近い有権者から人気を取ることしか眼中にない。

 事件を受けてテロや治安対策に注目が集まるなか、メルケルが極右に支持を奪われている可能性はある。だが重要なのは、メルケルはまだ終わっていないということだ。AfDには連立を組める政党が一つもなく、来年の総選挙で大きく躍進したところで政権を取ることはできないからだ。

「我々は恐怖によって無力になりたくない」とメルケルは火曜の記者会見で語った。それはドイツの文化でもある。ベルリンの人々は事件による恐怖をやり過ごし、クリスマスシーズンは続いていくだろう。だがメルケルは、今後のドイツ政治が「恐怖で骨抜きにされる」可能性があるということも、知っておかなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三村財務官の続投を決定、国際局長に緒方氏=財務省幹

ビジネス

再送-日産社長、閉鎖工場「決まったものはない」=株

ビジネス

スターバックス、中国事業の全面売却検討せず 報道を

ワールド

英右派「リフォームUK」、10年居住許可の販売提案
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 9
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、中国の資金援助を受けていない…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中