トランプは「台湾カード」を使うのか?

2016年12月13日(火)18時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 中国共産党系新聞の環球時報は、中国の厳粛なる領土主権の問題を「商売の取引に使うな」と批判。ネットユーザーのコメントには「商売人はやはり商売人」「言うことをコロコロ変えるから、次は何を言うかは分からない」といったものが目立つ。尖閣問題の時のような反日に燃え上がる激情的なものとはニュアンスが異なる。

 CCTVは、トランプ次期大統領の言動は、1979年以来築き上げてきた米中関係を破壊するものであるとした上で、彼の周りには反中右翼が多いので、その影響を受けており、実際に大統領に就任したあとも同様の政策を採るか否かは不明だとしている。もし続行するなら、戦争といった深刻な事態にもなりかねないと、評論家が警告した。

"一つの中国"原則はいかにして創られたのか?

 では、"一つの中国"原則は、いかにして創られたのか、少しだけ詳細に見てみよう。

 日中戦争が終わった後、蒋介石(国民党)がトップリーダーであった「中華民国」を倒そうと、毛沢東(中国共産党)が革命(反乱)を起こし、国共内戦が始まった。内戦に勝った毛沢東は、1949年10月1日に中華人民共和国誕生を宣言。蒋介石は同年、台湾に「遷都」し、台北を「中華民国」の臨時首都として、広大な大陸を含めた国土を「一つの中国」とみなす「大中国政策」を実施した。「中国を代表する国家は中華民国のみである」ことを絶対的な政治基盤としていた。

 一方、中国大陸の北京政府は、「中華民国を倒して中華人民共和国が誕生したのだから、元中華民国であった領土は、すべて中華人民共和国のもの」として「一つの中国」を主張。

「中華民国」は第二次世界大戦で連合国側としてアメリカとともに日本と戦っているので、国連には「中国」を代表する国として加盟し、安保理常任理事国でもあった。

 ところが、泥沼化したベトナム戦争からの撤退を選挙公約にして当選した共和党のニクソン大統領(1969年~1974年)は、北ベトナムを応援し中ソ対立を抱えていた北京政府に接近し、大統領としての地位を固めようとしたのである。そのため北京政府が主張する「一つの中国」を選択し、中華人民共和国が唯一の「中国」を代表する国家として国連加盟するに至る。

 このとき、同盟国であった中華民国にも知らせず米中が接近したことを知った蒋介石はアメリカに裏切られたと激怒して、国連から脱退してしまう。日本にも知らせなかったのは、共和党の大統領としての地位を確保するため、民主党に知られ、出し抜かれたくなかったからだと追われている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港小売売上高、12月は前年比6.6%増 8カ月連

ビジネス

フジHD、旧村上系が大規模買付取り下げ 外部資本導

ワールド

スペイン、16歳未満のソーシャルメディア利用禁止へ

ワールド

トルコCPI、1月は前月比+4.84% 予想上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 8
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 9
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 10
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 8
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 9
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 10
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中