最新記事

2016米大統領選

トランプ「大統領」のエネルギー政策

2016年11月10日(木)16時50分
岩瀬昇

Mike Segar-REUTERS

<国家百年の計に則って追求されるべきエネルギー政策。トランプ「大統領」になって米国のエネルギー政策はどうなるのだろうか...>

石油ガス業界は勝者。「パリ協定」はキャンセル

「よもや、まさかのトランプさん」(2016年4月4日、弊ブログ#159参照)が次期米国大統領になることが決まった。

 国家百年の計に則って追求されるべきエネルギー政策は、「民意に乗る」だけではなく「民意をリードする」ことが大事だ、と筆者は考えているのだが、米国民は「民意に乗る」大統領を選出した。

 ほとんどすべてのマスメディアは「民意」を見誤った、それはなぜだ、と言うのが結果判明後のメディアの関心事になっているようだが、ここでは本ブログの目的に基づき、トランプ「大統領」になって米国のエネルギー政策はどうなるのだろうか、という観点からFTの記事を紹介しておこう。

 "Trump victory: corporate winners and losers" (Nov 10, 2016 around 2:00am Tokyo time)という記事の中の、エネルギー業界に関するEd Crooks記載の部分だ。さらにFTは "US energy: who flares wins" という記事も掲載しているが、こちらからも参考となる部分を[ ]書きで追記しておく。

 ・石油ガス業界は勝者。

 ・トランプはこれまで、米国をエネルギー自立できる国にする、と主張し、そのために国内の石油ガス開発を促進すべく(連邦政府管轄の)土地を開放する、と言っている。

 ・昨年末合意された「パリ協定」は「キャンセル」する。

 ・オバマ大統領が提案している(US Clean Power Planと呼ばれる)発電所からの温暖化ガスの排出を抑える政策を破棄する(なお、米EIAが8月に発表した最新「年次エネルギー展望2016―2040年までの予測」はオバマ政策を前提としている)。

 ・これらの政策は石炭火力を支持するものだが、安価なシェールガスに基づくガス火力との競争があり、限界があるだろう。[石炭主要産地であるウエストバージニアで最大の投票差を得たことは驚くに値しない。石炭業者は、2030年までに発電所からの排出ガスを3分の1削減させることを目したUS Clean Power Planの立法化を遅延させている]

 ・[トランプは風力にも太陽光にも経済性に疑念を持っており、タービン製造業者やパネル製造業者は負け組]

 ・連邦管轄地域での(シェールオイル、ガスの)掘削が可能になるかもしれない会社を含め、石油ガス等エネルギー会社は勝者。

 ・(ノースダコタ州のシェールオイル生産の雄)Continental Resourcesの(実質オーナー、社長)Harold Hammはエネルギー問題のトップアドバイザーだったので、トランプ政権のエネルギー相最有力候補。

 ・カナダからメキシコ湾岸へのパイプライン建設プロジェクト(Keystone XL)を推進しているTransCanadaも勝者。2015年にオバマ大統領の拒否権で頓挫している同計画を、トランプは再び提案するよう求めている [但し、州内のことには連邦政府といえども関与出来ない]。

 ・イランの原油輸出増につながった核協議合意を批判しており、石油供給にも影響を与えるかもしれない [複雑な構造を持つ合意をひっくり返すことは容易ではないが、もし「禁輸措置」が復活するなら、増えた100万B/Dほどのイラン原油輸出分がなくなり、トレーダーたちの心配は消失する]。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テロ対策トップ辞任、イラン戦争支持できず 「切迫

ワールド

トランプ氏、NATO消極姿勢を非難 イラン作戦巡り

ワールド

イラン交戦で新たに4500万人が飢餓の恐れ、WFP

ワールド

仏、敵対行為中は不参加 ホルムズ海峡護衛任務=大統
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 6
    「目のやり場に困る...」グウィネス・パルトロウの「…
  • 7
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    生徒がいない間に...中学教師、教室でしていた「気持…
  • 10
    戦争反対から一変...湾岸諸国が望む「イランの脅威」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 8
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中