最新記事

2016米大統領選

「ソフトトランプ」でも日本はハードな円高に、大統領権限で通商を狙い撃ちか

2016年11月9日(水)19時38分

 通貨安による景気刺激策は、G20声明で排除されている「禁じ手」だ。しかし、米経済もかつてのような強さはない。明示的ではないにせよ、口先介入などを通じて弱いドルを志向する可能性は小さくない。ドル安・円高誘導となるかはともかく、米経済に悪影響を与えるような過度なドル高・円安は容認できないというのは、議会でも賛成を得やすい考えだろう。

 日本の対米貿易黒字は1991年の58.4%をピークに徐々に低下し、現在は10%程度。今の「悪役」は対米貿易赤字の5割近くを占める中国だ。しかし、反グローバル主義のトランプ氏が強硬姿勢を強め、為替へのプレッシャーが強まれば、日本や円も「とばっちり」を受ける可能性がある。

 ムーディーズ・アナリティクスの分析では、トランプ氏の政策が実施された場合、米国経済を弱め、雇用を減らし、失業率を高めるという結果になった。1)政策の完全実施、2)一部実施、3)議会に阻まれ政策調整──という3つのシミュレーションでは、議会に阻まれるケースがもっとも高い成長率を示した。

 「ソフト」なトランプ政策はそれほど悪くないのかもしれないが、「保護主義は結局、米経済の潜在成長率を低め、長期的にダメージを与える」とムーディーズ・アナリティックス・ジャパンのシニア・ディレクター、水野裕二氏は話す。

 もし、ドル安が米景気を回復させたとしても、日本にとっては円高の悪影響が、米景気回復効果を相殺してしまうことになる。

円高で最も下げた日本株

 トランプ氏の勝利が予想外だったのは、どこの市場でも同じ。だが、アジア市場で最も下落率が大きかったのは、日本株だ。日経平均<.N225>の下げ幅は一時1000円安を超え、終値の下落率も終値で5.36%に達した。日本時間午後3時時点のインドや香港の主要株価の3%台を大きく上回っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:金利も市場機能働く本来の姿に=金融政

ビジネス

アマゾンやファイザーが対仏投資計画、モルガンSはパ

ビジネス

シティ、インドの投資判断を引き上げ 安定収益と経済

ワールド

イスラエルへの武器供給停止、ハマス強化招く=英外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中