マクロスコープ:トランプ氏の「不確実性」懸念、自民がイラン情勢で会合 専門家も慎重姿勢
写真はトランプ大統領。3月9日、米フロリダ州マイアミで撮影。REUTERS/Kevin Lamarque
Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 10日 ロイター] - 自民党は10日、米国とイスラエルによるイラン攻撃を巡って政府から最新情勢を聴取する党内会合を開いた。トランプ米大統領が軍事作戦の「終結」に言及したことで原油供給を巡る懸念は一時後退、金融市場のリスク回避ムードも和らいだが、トランプ氏の行動が読めないなどとして、先行き不透明感が払しょくされたとの受け止めは与党内に乏しい。政府関係者や専門家の間でも中東情勢の不安定化は長引くとの見方が根強く、慎重な声が聞かれた。
<「先行きは依然、不透明だ」>
非公開で開かれた同会合では、関係省庁から現状の説明や邦人保護の進捗状況について説明があったという。出席議員の一人はロイターの取材に「株価の暴落を含めたトリプル安で市場が混乱している。物価や経済への影響が足元の景気回復に水を差しかねないとの声があり、対策の必要性を訴える議員が多かった」と話した。早期収束の可能性について「トランプ氏の発言はコロコロ変わり信用できない」とも述べた。
会合後に記者団の取材に応じた党外交部会長の高木啓衆院議員は、出席議員から「原油価格が高騰しているのでよく注視すべきだとの意見があった」と説明。「我が国として外交努力を通じて早期鎮静化に向けて努力をしていくとの考えは、党も政府も同じ考えだと思っている」と、引き続き事態への対処が必要だとの考えを示した。
トランプ氏は9日、CBSとのインタビューで、イランでの軍事作戦が「戦争はほぼ完全に終わったと思う」と表明。この日、主要7カ国(G7)財務相がオンライン会合を開き、石油備蓄の協調放出などについて協議した。
こうした動きを背景に、10日の東京株式市場で日経平均株価 は前日比1519円高の5万4248円で取引を終えた。前日に一時1バレル120ドルに接近していた米原油先物指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)も80ドル台付近へと下落した。
それでも政府与党内に様子見姿勢が目立つ背景には、実際に戦争が終結した段階にないことに加え、トランプ氏の発信が日々大きく変わるとの疑念がある。イラン革命防衛隊も徹底抗戦の主張を続けている状況だ。自民の政務三役経験者は「原油価格が急騰し、11月に中間選挙を控えるトランプ氏が急に焦りだした」と分析した上で、米国がロシアに対する石油制裁緩和を検討しているとされる点などを挙げ、「一体何をやっているのか、という状態だ」と困惑した。
「米国はイランを完全に封じ込められていない。戦争が終わったとしてもテロが起こるリスクは残る」。ロイターの取材に応じた経済官庁幹部は10日、不安定なマーケットの動きを念頭にこう述べた。見通しの不確実性は維持されているとの考えを示したものだ。
<高市首相の役割>
平和外交研究所代表(元外務官僚)の美根慶樹氏は「トランプ氏の『ほぼ完全に終わった』との発言を金融市場は好感しているようだが、発言が本当かどうか到底信用できない」と見る。イランが死亡したハメネイ師の後継に反米強硬派と言われる次男モジタバ師を選出したことを念頭に、「この状況で戦闘の早期終結は論理的に理解できない。トランプ氏は様々な発言をするが、いちいち真に受けるわけにはいかないというのが自分の基本的な考えだ」とした。
高市早苗首相は19日に米ワシントンでトランプ氏と会談する。日本エネルギー経済研究所・中東研究センター所長の坂梨祥氏は「高市首相はトランプ氏に誰もこの戦争の長期化を望んでいないことを伝え、日本として戦争を終息させるために可能な限りの協力を行いたいと伝えるべきだ」と指摘。「トランプ氏はこの戦争から離脱する機会をうかがっていると思う。その機会を準備することが日本にできることではないか」と語った。
(鬼原民幸、竹本能文 編集:久保信博)
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