最新記事

イギリス経済

ポンド下落でイギリス物価大幅上昇へ、来年末は4%近くの予想も

2016年10月16日(日)15時52分

 10月13日、ポンド急落で英国の物価が今後大幅に上昇するのは避けられない。一部の有力銀行のエコノミストからは来年末までに上昇率が4%近くになるとの予想も出ている。タイ首都バンコクで2010年10月撮影(2016年 ロイター/Sukree Sukplang)

ポンド急落で英国の物価が今後大幅に上昇するのは避けられない。一部の有力銀行のエコノミストからは来年末までに上昇率が4%近くになるとの予想も出ている。

8月の消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率は0.6%。ロイター調査によると、今年の終わりまでに1%を超え、来年の平均は2.3%とイングランド銀行(英中央銀行、BOE)が目標とする2%を上回る見込みだ。

HSBCのエコノミストチームは、13日時点で1.22ドルだったポンド/ドルは今後さらに下落し、これによってCPI前年比上昇率は来年末までに3.7%前後に跳ね上がるとみている。

キャピタル・エコノミクスのサミュエル・トゥーム氏は、ポンド/ドルが恐らく1.10ドルまで下がり、2018年のCPIの平均は4%になりかねないと指摘した。

今後英国の消費者は、国民投票における欧州連合(EU)離脱派勝利に端を発したポンド安がもたらす物価上昇圧力にどこまで耐えられるかが試されることになる。

英スーパーマーケット最大手テスコは、ポンド急落を受けた仕入れ価格をめぐる対立で英蘭系日用品大手ユニリーバの一部製品のネット販売を一時中止する動きがあった。

また英ガソリン小売業協会によると、国内ガソリン価格はポンドの急反発がない限り今月末までに1リットル当たり0.04─0.05ポンド上がるとみている。

フォードやゼネラル・モーターズ(GM)のボクソールなどは既にポンド安を受けて値上げに動いた。

<英中銀は当面静観か>

BOEは、2011年にCPIが5%まで上振れする事態を許したように、今回も物価高を容認する意向を示唆している。英経済は来年著しく減速すると予想される中で、利上げで物価上昇を抑えれば成長への打撃は必至だとBOEが承知しているためだ。

こうしたBOEの姿勢が変わるのは、ポンド/ドルが一段と値下がりして1ドルちょうどに向かうような場合だけだろう。

JPモルガンのエコノミスト、アラン・モンクス氏は「利上げが真剣に議論されるにはポンド/ドルが1.10ドルの水準を続ける必要があるとわれわれは考えている」と話した。

(Andy Bruce記者)



[ロンドン 13日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円

ワールド

スウェーデンのクラーナ、米IPOで最大12億700

ワールド

西側国家のパレスチナ国家承認、「2国家解決」に道=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中