最新記事

電子書籍

「キンドル読み放題」の隠れた(けれども大きな)メリット

2016年8月29日(月)17時30分
渡辺由佳里(エッセイスト)

JurgaR-iStock.

<日本でもようやくスタートしたKindle Unlimited。約2年前にスタートしたアメリカでもそのメリットとデメリットが議論されているが、何より大きなメリットは減少する「読書人口」を取り戻すところにある>

 アメリカでは2014年7月に始まったアマゾンのKindle Unlimited(キンドル読み放題)サービスが、今月ようやく日本でもスタートした。アマゾンがリストアップした12万冊以上の本、コミック、雑誌および120万冊以上の洋書作品が、月額980円で読み放題になるというものだ。

 アメリカでは、オーディオブックも「読み放題」で読める作品があるが、日本のサービスには含まれていない。その代わりに、コミックを含む和書と洋書の両方が楽しめるメリットがある。筆者はアメリカでの公式スタートよりも前から、2年以上Kindle Unlimitedを使っている。その体験から、「毎月980円払う価値があるのだろうか?」といった疑問も含めて、メリットとデメリットを見てみたい。

【参考記事】日本版「キンドル・アンリミテッド」は、電子書籍市場の転機となるか

 アメリカのKindle Unlimitedについてよく見かける批判は次のようなものだ。
利用者サイド:
1)読みたい本があまりない
2)Kindle Unlimitedにリストアップされているのは、一定の水準を満たしていない作品ばかり
3)自費出版の安い作品の場合には10冊以上読まないと元が取れない。それなら、買ったほうが安い
作家サイド:
1)読者が本を買ってくれなくなる

 アメリカの場合、Kindle Unlimitedのリストには「ハリー・ポッター」シリーズなど大手出版社の作品も多く含まれている。けれども、大部分はAmazonの出版部門や自費出版の作品だ。大手出版社から出版できる基準に達していない作品もかなりの数ある。それらの多くは、0.99ドル程度なので、たしかに10冊以上読むのでなければ元は取れない。

 しかし、この2年間でその様相は大きく変わってきている。

 まず、アマゾンの出版部門からもベストセラー作家が誕生するようになった。「アマゾン・パブリッシング」のミステリー/スリラー専門ブランド「Thomas & Mercer」から発売された『The Wayward Pines』三部作は、アマゾンのベストセラーになっただけでなく、フォックステレビでドラマシリーズになった。著者のBlake Couchは一躍有名作家となり、大手ランダムハウスの傘下にあるCrownに移籍して発売した『Dark Matter』も話題作になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正-ゼレンスキー氏、和平案巡り国民投票実施の用意

ワールド

イスラエル、ソマリランドを初の独立国家として正式承

ワールド

ベネズエラ、大統領選の抗議活動後に拘束の99人釈放

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中