最新記事

フード

うなぎパイの春華堂がニューヨーク進出、うなぎパイ抜きで!

2016年8月11日(木)06時17分
小暮聡子(ニューヨーク支局)

©Kenji Takigami

<7月末、ニューヨーク郊外の高級避暑地で開催された米フード業界のプレミアイベントに浜松の老舗菓子屋「春華堂」が参加。行ってみると、「うなぎパイ」がないどころか、同社の和菓子を食材に使った、およそPR効果などなさそうなアミューズが提供されていた。春華堂はなぜ、こんな形で世界に進出することにしたのだろうか> (写真:和菓子を使った料理を振る舞うNYのミシュランシェフ、マット・ランバート)

 浜松生まれ、浜松育ち。1887年創業の老舗菓子屋「春華堂」は、その社名よりも看板商品の「うなぎパイ」で有名だ。静岡県を訪れたことがない人でも、1度はこの浜松名菓を口にしたことがあるのではないだろうか。

 その春華堂が7月末、米フード業界で最も権威ある「ジェームズ・ベアード財団」主催のプレミアイベントに参加すると聞きつけ、行ってきた。

 毎年夏にニューヨーク郊外の高級避暑地ハンプトンで開催されるイベント「Chefs & Champagne(シェフズ&シャンペン)」は、フード業界のアカデミー賞とも言われる「ジェームズ・ベアード・アワード」の授賞式を兼ねている。過去に同賞を受賞したシェフやミシュランの星を持つスターシェフなど超一流の料理人たちが全米から集まり、舌の肥えたニューヨーカーたちを相手にそれぞれ「至極の一皿」を振舞う。そんな"ザ・ニューヨーク"とも言えるセレブイベントで、「うなぎパイ」が何をしようというのか。

和菓子がミシュランシェフの手で大変身

 7月23日、マンハッタンから車で走ること3時間。国内外のセレブが別荘を構えるハンプトンの広大な敷地に、ひときわ目立つ大きな白いテントが現れた。シェフズ&シャンペンの会場だ。入場料は、一般料金が275ドル、VIPチケットは375ドル。

ny160811-1.jpg

Chefs & Champagneの会場 ©Kenji Takigami

 会場内では約40人のトップシェフたちの味を食べ比べようと、ハイセンスなファッションに身を包んだ客たちがシャンパングラスを片手に歩き回っている。ブースからブースへと一品料理を食べ歩くというスタイルは、さながら食の見本市だ。

 春華堂はこのイベントに、ニューヨークでミシュラン1つ星をもつニュージーランド料理店「ザ・マスケットルーム」のオーナーシェフ、マット・ランバートとタッグを組んでスポンサー企業として参加していた。会場に入ってすぐの、一番目立つブース。そこで浴衣に身を包んだ春華堂の女性社員たちが提供していたのは、あの「うなぎパイ」ではない。ランバートが春華堂傘下の和菓子ブランド「五穀屋」の商品を使って作り出した、一口サイズのアミューズだ。

ny160811-2.jpg

五穀せんべい「山むすび」を使用したマグロのカナッペ ©Kenji Takigami

ny160811-3.jpg

フォアグラを五穀最中「よつ割り」でサンドしたアミューズ ©Kenji Takigami

 ランバートが考案したのは、五穀せんべい「山むすび」を使用したマグロのカナッペ、フォアグラを五穀最中「よつ割り」でサンドしたアミューズなど4品。ブースの前では客たちがひしめき合うようにしてその皿に手を伸ばし、口々に「うーん、美味しい!」と目を輝かせている。和食らしきその一皿に何が入っているのか興味津々な様子で、「この食材は何なの?」と問いただす姿が目に付く。春華堂のブースは、常に客足が絶えないほどの盛況ぶりだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、英軍施設への反撃警告 ウクライナ支援巡る英

ワールド

中国主席に「均衡の取れた貿易」要求、仏大統領と欧州

ワールド

独、駐ロ大使を一時帰国 ロシアによるサイバー攻撃疑

ワールド

ブラジル南部豪雨、80人超死亡・100人超不明 避
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 6

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 7

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 10

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中