最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

ようやくヒラリーを受け入れ始めたサンダース支持者

2016年7月14日(木)18時00分
渡辺由佳里(エッセイスト)

bernie0714-pics02.jpg

党大会前の試金石となったニューハンプシャーのイベント(筆者撮影)

 ヒラリーはこの日のスピーチで、「最低賃金を1時間15ドルに引き上げる」「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)反対」「公立大学の授業料無料化」「富裕層や企業への課税強化」「ウォール街の金融機関への規制強化」といったサンダースが主張してきた政策を高いプライオリティとして強調した。これはサンダースの活動の成果と言えるだろう。また、ヒラリー自身が公約していた政治資金改革についても、サンダースとその支持者を尊重する形であらためて公約した。

 取材に答えてくれたサンダース支持者は、これまでヒラリーの演説を直接聞いた体験がまったくなかった。だから、多様性あるアメリカの価値を強調する、躍動的で説得力のあるヒラリーのスピーチに心を動かされた人が少なくなかったようだ。

「スピーチは確かに素晴らしかったけれど、口先だけの約束かもしれない」と渋い口調で語る50代女性のような人も確かにいたが、「サンダース支持だったが、本選ではヒラリーに投票する」と話した人のほうが多いのは意外だった。10代の若者のほうが柔軟だというのも意外だ。ソーシャルメディアで目立つのは、攻撃的な若い男性の支持者なのだが......。

 予備選ではサンダースの熱心な支持者だったという19歳のエリックは、「ソーシャルメディアで目立つ極端な意見は、実はごく一部。多くの人は、発言しないから」と言う。その発言しないマジョリティは、11月までにヒラリーを受け入れるだろうし、それ以外の人は、たとえサンダース自身が何を言っても気を変えることはないだろうと。

【参考記事】トランプ陣営はスタッフも資金も足りない

 イベント後、インターネットにあふれたのは、予想通り、サンダース支持者による「吐き気がする」「バーニーに裏切られた」というネガティブな反応だった。しかし、同じニューハンプシャーの以前のイベントと比較しても、サンダースの情熱的なムーブメントがすでにクールダウンしているのが見える。

 2008年の予備選で敗れたヒラリーの支持者は、「ぜったいにオバマには投票しない」と誓った。しかしいったん本選が始まると、積極的にオバマを応援するヒラリーに心を動かされてオバマを支援し、彼を勝利に導いた。同様にサンダース支持者の過半数は、11月までにはヒラリー支持をしぶしぶながらも受け入れることになるだろう。

ニューストピックス:【2016米大統領選】最新現地リポート

筆者・渡辺由佳里氏の連載コラム「ベストセラーからアメリカを読む」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中