最新記事

AI

AIプログラム、空中戦シミュレーションで元米軍のベテランパイロットに完勝

2016年7月5日(火)17時50分
高森郁哉

Lisa Ventre, University of Cincinnati

 米国で開発された人工知能(AI)が、フライトシミュレーターを使った空中戦で、元米空軍パイロットに完勝した。このAIは、専用に開発された高価なマシンではなく安価な消費者向けPC上で稼働する点も画期的で、米ニューズウィークなどが報じている。

AIプログラム「アルファ(ALPHA)」

 インド系オープンアクセスジャーナル出版社、OMICSグループが発行する軍事専門誌「Journal of Defense Management」に掲載された論文で概要が明らかになった。論文によると、このAIプログラム「アルファ(ALPHA)」を開発したのは、シンシナティ大学出身のニコラス・アーネスト博士が創設したサイバネティックス社(Psibernetix)。同社は米空軍研究所と協力し、「遺伝的ファジーシステム」と呼ばれるアルゴリズムに改良を加え、非常に複雑な問題を効率よく短時間で解決できるようになったという。

【参考記事】MITメディアラボ所長 伊藤穰一が考える「AI時代の仕事の未来」

 アルファと対戦したのは、元アメリカ空軍大佐のジーン・リー氏。自ら戦闘機を操縦したほか、地上管制官として対空迎撃を指揮した豊富な経験がある。シミュレーター上のAIとは80年代初期から対戦しているといい、サイバネティックスの開発にも協力してきた。

 空中戦のシミュレーションでは、4機の赤い戦闘機のチームをアルファが操縦し、対する青い戦闘機2機からなるチームをリー氏が担当。数時間におよび複数回の対戦は、アルファの全勝に終わった。リー氏は、「AIは私の意図を見透かしているようで、飛行やミサイル配備の変更に瞬時に反応した」とコメント。また、長時間の対戦で自身は「疲弊し、精神的に消耗した」が、AIは対戦開始の時と変わらず鋭敏なままだったという。

コンシューマー向けPCで稼働

 アルファのプログラムは、500ドル程度のコンシューマー向けPCで稼働する。さらに、約35ドルの安価なシングルボードコンピュータ「ラズベリー・パイ」でも動作可能だという。

 AIの実用化を目指す取り組みは、チェスや碁、自動運転車からセックスロボットまで、さまざまな分野で進んでいる。今回のニュースと「ドローン操縦士を襲うPTSD」のような話と合わせて考えると、米軍がAIに無人攻撃機を操縦させることを検討していても不思議ではない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

G7、エネルギー市場安定化に向けあらゆる措置を講じ

ワールド

中国コスコの船舶がホルムズ海峡通過、2度目の試み 

ビジネス

金融政策「良い位置」、イラン情勢の影響見極めへ様子

ビジネス

米FRB議長、新卒者の長期的な雇用見通し楽観視 A
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思われるドローンの攻撃を受け大炎上
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 9
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 10
    イタリアに安定をもたらしたメローニが国民投票で敗…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中