最新記事

英EU離脱

イギリス国民投票、離脱派はマイノリティー市民取り込みに苦戦

2016年6月23日(木)19時23分

6月22日、英国のEU離脱陣営はマイノリティーの説得に苦慮している。写真はイスラム教徒の女性。ロンドンで3月撮影(2016年 ロイター/Stefan Wermuth)

 英国のアジア系やアフリカ系など少数派(マイノリティー)市民の間では、欧州連合(EU)残留を支持する傾向が強い。殺害された残留派議員への共感や、離脱派陣営のポスターに対する反感も残留派の追い風となり、離脱陣営は少数派の説得に苦慮している。

 人種的マイノリティーの公式な定義はないが、2011年の国勢調査ではイングランドとウェールズの人々の14%が自身を非白人と認識し、20%近くは白人系英国人ではないと答えている。23日の国民投票を控えて残留派と離脱派が拮抗する中、結果を左右し得る勢力だ。

 離脱陣営はこれまで、少数派市民が抱くEUの移民政策に対する懸念に訴えかけてきた。アジア系市民の多くはルーツである旧英植民地から家族を呼び寄せており、EU域外からの移民に適用される査証規則がその障害になっているとの不満を抱く者もいる。EUを離脱すれば、呼び寄せるのはもっと簡単になる、というのが離脱陣営の主張だ。

 しかし難民受け入れに理解を示していた残留派の女性下院議員、ジョー・コックス氏が殺害されて以来、少数派市民の中には離脱派を支持することを考え直す者も出てきた。

 離脱派の英独立党のファラージ党首が公表したポスターも、少数派市民による離脱派支持に水を差した。ポスターは行列をつくる難民の写真を背景に「(移民受け入れは)限界点だ」とのメッセージを掲げている。

 ロンドン東部のモスクにいた女性(33)は「彼女(コックス議員)のような人が残留すべきだと言っているのなら、それが正しい決断だと思うようになった。あんなポスターやファラージュみたいな連中を見ると考えてしまう。『彼らは何を変えるのだろう。黒人や少数人種にとって状況は悪くなりそう。残留した方が安全そうだ』と」と語った。

人口動態も影響か

 人種別の内訳を示した世論調査を見ると、少数派市民では過半数がEU残留を支持しており、離脱支持は25%から33%程度となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人

ワールド

プーチン氏、対ウクライナ姿勢変えず 米制裁期限近づ

ワールド

トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命令 メ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中