最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

サンダース支持者はヒラリーに投票するのか? しないのか?

2016年6月17日(金)18時30分
渡辺由佳里(エッセイスト)

 だが、ヒラリーは「アメリカ合衆国は寛容で、公平な国だ。見た目が異なる人、愛し方が違う人、宗教が違う人を含め、すべての人が公平に扱われるよう子供たちに教えなくてはならない」と、アメリカの多様性を讃え、国民が手をつなぐことを訴えた。

 さらにヒラリーは、予備選でも重要なアジェンダとしていた銃規制を強く訴えた。それを評価したサンダース支持者の一部が、ソーシャルメディアでヒラリー支持を表明し始めたのだ。

 この影響もあったのか、14日のワシントンDCの予備選は、78.7%対21.1でヒラリーが圧勝した。

【参考記事】選挙戦最大のピンチに追い込まれたトランプ

 しかし、サンダースはいまだに戦いをやめるつもりはない。また、ヒラリーの副大統領のポジションも望んでいないと言われる。なぜなら、それはサンダースの情熱的な支持者の目には「sell out(裏切り)」と映るからだ。すでにヒラリーを犯罪者のようにみなしている彼らにとって、それまでにどれほどリベラルな政治家として評価されていても、ヒラリー支持を表明したとたん「裏切り者」になる。

 たとえば、エリザベス・ウォーレン上院議員は、消費者金融保護局の設立に貢献し、「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」運動の思想基盤を作ったことでも知られ、サンダース支持者から愛されていた。サンダースを最初に担ぎだしたのは、この「ウォール街を占拠せよ」運動の中心人物たちだったとも言われている。

 ところが、ウォーレンがヒラリー支持を表明したとたん、「裏切り者」「魂を売った」「自分にとってエリザベスは死んだも同じ」という非難がソーシャルメディアにあふれた。ウォーレンのTシャツを燃やしている写真をツイートした若い女性もいた。「バーニー(サンダース)がヒラリーの副大統領候補になったら、彼も裏切り者だ」という意見もすでに見かける。

 ワシントンDCの予備選の夜、ヒラリーとサンダースは90分にわたって会談したが、サンダースは「ヒラリー支持」を表明しなかった。

 そして16日の夜、サンダースは自分の支持者だけに向けてオンラインの生放送で語りかけた。(リンクを入手するためには、サンダースのサイトで申し込む必要がある)

 その内容は、9日にセンクや筆者が予想した通り、ヒラリー支持を発表するものではなく、「政治革命」を続けるという宣言だった。トランプ批判よりも、民主党が「労働者」と「若者」のための党に変わるように支持者が圧力をかけ続けることを奮起する部分のほうが長かった。そしてヒラリーについても、同意する部分が多いことを認めつつ、「著しく意見が食い違うアジェンダがある」ことを強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週

ビジネス

マスク氏報酬と登記移転巡る株主投票、容易でない─テ

ビジネス

ブラックロック、AI投資で各国と協議 民間誘致も=

ビジネス

独VW、仏ルノーとの廉価版EV共同開発協議から撤退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 2

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 3

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 4

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「香りを嗅ぐだけで血管が若返る」毎朝のコーヒーに…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中