最新記事

日本政治

「アベノミクスは消失」経済界の7割が厳しい批判、参院選は「現状維持を望む」

2016年6月22日(水)18時14分

 ただ「野党の議席増加」を望む25%の企業からは「数を背景とした安倍政権の強引な政権運営は目に余る」(食品)などの懸念が示され、「政治の暴走に歯止めが必要」(多数)との声も目立つ。

増税延期への支持6割・不支持4割、将来不安解消できず

 安倍首相が消費税率10%への引き上げを再度延期したことは、6割の企業が「支持する」と回答。景気の減速が予想されるなか、「消費増税の実施は厳しい」(電機)、「デフレに戻ってしまう」(卸売)といった声が多数を占めた。

 もっとも「支持しない」企業も4割に上った。「社会保障の長期的見通しが立たないことで消費が抑制されている」(機械)、「将来不安が増大し、結果的に景気にマイナス」(電機)など、景気低迷の背景に将来不安があるとの見方も多い。増税延期は「単なる選挙対策」(小売)とみる企業も目立つ。

 このため、増税延期が企業経営に与える影響についても見方はまちまちとなった。「景気悪化が回避されデフレ脱却が早期実現する」との回答が30%に達する一方、「社会保障不安が増大し、消費が低迷する」も32%を占めた。

 また、「消費活性化で売り上げが増加」とみる企業と「物価上昇機運が後退し、デフレ脱却が遅れる」とみる企業がともに26%となった、

財政悪化で「国債格下げに伴い、資金調達が困難になる」との回答は8%。企業の手元資金が潤沢なだけに、資金調達への懸念は少なかった。

 2019年10月の増税実施については、可能性が「高い」との見方が7割を占めたが、「オリンピック前で景気回復」(石油など)との見通しに加え、「財政上これ以上の延期は許されない」(輸送用機器)など、財政問題を懸念して引き上げざるを得ないとの見方も多かった。

英国のEU離脱は為替変動懸念6割、事業計画への影響限定的

 英国のEU離脱を問う国民投票がまもなく実施されるが、離脱した場合、「為替レートの変動」が事業に影響するとみる企業が6割と最も多かった。「売り上げ・利益の減少」につながるとみる企業は1割、「事業計画見直し」や「海外拠点再編」はそれぞれ4%にとどまった。

 具体的な影響については「通貨危機発生を懸念」(輸送用機器)、「ユーロ下落に端を発する金融混乱」(建設)を懸念する企業があるほか、「欧州の景気後退の可能性が高まり、中国を中心にアジア景気にも影響を与え得る」(運輸)との指摘もあった。

 (中川泉 梶本哲史 編集:石田仁志)

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トヨタ、23年度は世界販売・生産が過去最高 HV好

ビジネス

EVポールスター、中国以外で生産加速 EU・中国の

ワールド

東南アジア4カ国からの太陽光パネルに米の関税発動要

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時700円超安 前日の上げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中