最新記事

南シナ海

アメリカ=ベトナムが関係改善、南シナ海狙う中国の「頭痛の種」に

2016年5月31日(火)10時36分

外交に依存

 中国当局は今のところ、反応を示してはいない。

 だが中国はベトナムが近代兵器を入手し、それらを南シナ海に配備することを注視していると、元外交官で、中国国際問題研究院の阮宋澤氏は指摘。「これが中国とベトナムの領有権問題に影響する可能性はない、とは言えない」と述べた。

 中国本土の安全保障を専門とする嶺南大学(香港)の張泊匯教授は、ベトナムの政策立案者たちは近代的な中国軍には勝てないと分かっている故、中国と安定した関係を維持するためには外交に頼らざるを得なかったとの見方を示した。

 オバマ大統領がベトナムを訪問した後でも、このような状況は今後も続くとみられると、張教授は指摘。同大統領のベトナム訪問を「最も安上がりな防衛手段」と評し、「ベトナムは米国を抑止戦力の強化に組み入れようとしている。中国との関係を深めるには、米国というカードを使わなければならない」と語った。

カムラン湾

 米海軍当局者は、ベトナムへの寄港を徐々に増やしたいが、中国に圧力をかけ過ぎることに対するベトナムの懸念を承知していると話す。

 ベトナム当局は、カムラン湾に外国艦船の寄港を受け入れる新たな国際港の開港を3月に発表した際、ベトナム軍の報道資料によれば、中国軍は正式な招待を受けた最初の外国軍の1つに含まれていた。

 米海軍の入港は現在、長年計画されてきた正式な業務事項だが、米艦船がカムラン湾に定期的に寄港できるようにするには、提供協定が長期的な選択肢の1つだと、米軍当局者は語る。

 安全保障専門家によると、例えば寄港が少し増えるだけでも、南シナ海における中国の活動を複雑化するという。中国は現在、スプラトリー諸島に建造した7つの人工島で進める軍民両用の施設建設に重点を置いている。

 中国は自国の領土として、南シナ海の80%を主張。一方、台湾、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ブルネイも、世界で最も重要な航路の1つである同海域の一部で、領有権を中国と争っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

加との貿易交渉「困難」、トランプ氏の不満高まる=N

ワールド

ロシア中銀、0.5%利下げ 米制裁で不確実性高まる

ワールド

カナダ首相「再開の用意」、トランプ氏の貿易交渉終了

ワールド

米、カリブ海で「麻薬船」攻撃 初の夜間作戦で6人殺
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    韓国で「ふくしま」への警戒感払拭? ソウル「日韓交流…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中