最新記事

鉄鋼

「鉄冷え」どこ吹く風、蘇る中国ゾンビ製鉄所

2016年5月13日(金)19時09分

「中国では、大人になったらいずれマイホームとマイカーを持たなくてはと言われる。これらは生活の基本的ニーズを保証するだけでなく、鉄鋼需要を保証するものでもある」と、山西中升鋼鉄のChenXuewu氏は語る。

 閉鎖していた中国の製鉄所が復活したというニュースは、世界的な供給過剰に対処しようと努力する英国や米国の企業にとっては気の滅入る話だ。

 インド鉄鋼大手タタ・スチールは3月、中国製を含む安い輸入品の大量流入が原因で英事業の一部売却を決めたと発表した。

 鉄鋼業界の情報ポータルサイト「steelcn.cn」によれば、山西省だけで、過去1年程度の間に少なくとも23の製鉄所が生産を停止、もしくは削減した。そのうちいくつは生産を再開している。

 停止していても、山西省の昨年の粗鋼生産量は3850万トンに上る。これは英国の生産量の3倍以上だ。中国全体の生産量は8億0400万トンで世界最大となっている。

 マッコーリー・リサーチは4月のリポートで、中国鉄鋼メーカーのセンチメントは過去数年で最も明るいとしている。

ファンダメンタルズの欠如

 山西中升鋼鉄の製鉄所から北に車で3時間ほどにある広大な山西文水海威鋼鉄の製鉄所は、ブロートーチを使って巨大な金属製のじょうごを切断している男性2人を除けば閑散としている。製鉄所の門には警備員さえいない。

 山西文水海威鋼鉄は1985年に生産を開始、ピーク時には従業員が8000人いた。だが採算が取れなくなり、約半年前に初めて閉鎖を余儀なくされた。

 しかし現在、呂梁市政府は同市の主な納税者で雇用者である山西文水海威鋼鉄に生産再開を求めている。国営メディアの報道によれば、市長と副市長は3月に同社を訪れ、できるだけ早い工場再開を促している。同社はこの1カ月以上、準備に追われているという。

 同市政府はコメントを差し控えた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ハリコフ攻撃、緩衝地帯の設定が目的 制圧計画せずと

ワールド

中国デジタル人民元、香港の商店でも使用可能に

ワールド

香港GDP、第1四半期は2.7%増 観光やイベント

ワールド

西側諸国、イスラエルに書簡 ガザでの国際法順守求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中