最新記事

アジア

沖ノ鳥島問題で露呈した日本と中国の共通点

2016年5月12日(木)18時00分
シャノン・ティエジー

 さらに馬は台湾の海岸巡防署に対して、沖ノ鳥島近海への漁業者のアクセスを守る措置を取るよう指示。これを受けて5月初め、海岸巡防署の巡視船と漁業署の船が沖ノ鳥島の周辺海域に向かい、EEZに進入した。この2隻を「支援する」ために海軍艦船も同海域に向かっており、日台の緊張は高まっている。

 だが外交的解決の望みもあるかもしれない。台湾と日本は13年、両者(と中国)が領有権を主張する尖閣諸島(台湾名・釣魚台)周辺の漁場で、互いの漁業権を認める合意を交わしている。しかも沖ノ鳥島については、対立の原因は領有権ではなく、国際法上の分類だけだ。

【参考記事】南シナ海仲裁裁判に台湾が横やり、裁定遅延の恐れも

 こうしたなか、中国がこの論争に口を挟んできた。

 中国外務省の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官は4月末、「国連海洋法条約(UNCLOS)の規定にあるとおり、人間の居住および経済的生活を維持することのできない沖ノ鳥礁のような岩は、EEZも大陸棚も有しない」とあらためて述べた。「それらの権利を主張するために沖ノ鳥礁を島と分類する日本の主張は、UNCLOSに違反している」

 近隣諸国の抗議を受けても、「本土から遠く離れたところにある孤立した岩」の周辺にEEZを強く主張する――もしかしたらこれは、中国と日本がようやく見つけた共通点なのかもしれない。

From thediplomat.com

[2016年5月17日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国特別検察官、尹前大統領の拘束令状請求

ワールド

ダライ・ラマ、「一介の仏教僧」として使命に注力 9

ワールド

台湾鴻海、第2四半期売上高は過去最高 地政学的・為

ワールド

BRICS財務相、IMF改革訴え 途上国の発言力強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中