最新記事

コンプライアンス

三菱自動車、軽を含む多くの車種で不正、一部は燃費最大15%悪化

正しい試験方法で測定が行われていたのはわずか3車種、机上計算で算出していた疑いも

2016年5月11日(水)22時59分

5月11日、三菱自動車は、燃費不正問題に関する社内調査の結果を国土交通省に再報告した。写真は会見する益子修会長兼最高経営責任者、11日都内で撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

 三菱自動車<7211.T>は11日、燃費不正に関する追加の調査結果を国土交通省に報告し、一部の車種で燃費が最大15%悪化することや3車種を除く全車種の燃費試験に法令違反の測定方法が採用されていたことを明らかにした。

 追加報告の中で、同社は4月に公表した軽自動車4車種のほか、販売中の車種や販売を終了した車種でも正しく走行抵抗値を算出していなかったり、SUV(スポーツ用多目的車)「RVR」などで机上計算で算出したりした疑いがあるなどと説明した。

 同社によると、正しい試験方法で測定されたのは「アウトランダーPHEV」「デリカD:5」「ミラージュ」の3車種。それ以外の6車種は違反した方法で測定されていたが、RVRを含め、正しい方法で燃費を計測しても差がなかったため、生産や販売を続ける。

 報告後に国交省で会見した相川哲郎社長によると、同社は不正問題の全容解明後に役員報酬のカットを検討している。また、RVRを含む海外販売向け車両には燃費不正がないことを「確認済み」という。

【関連記事】三菱自の調査報告は不十分、18日までに再提出求めた=国交省

 今回の報告内容について、国交省は「全容解明にはかなり遠い」としており、三菱自は18日までにあらためて報告する。販売が終了した車については資料が保管されている10年間をさかのぼって調査するが、ヒアリングする人数が多いため調査に時間がかかっており、現時点でも不正に関与した人数など詳細が把握できていないという。

 三菱自は4月26日に1回目の社内調査の結果を国交省に提出したが、同省は内容が不十分だとして5月11日までに再報告を指示していた。さらに、三菱自と同様の不正がないか他の自動車メーカーにも社内調査を指示、18日までに提出するよう要請している。

 燃費試験データの測定方法については、道路運送車両法で1991年に「惰行法」で実施することを定めたが、三菱自ではほとんどの車種で「高速惰行法」と呼ぶ独自方法の使用が常態化していた。高速惰行法のほうが計測時間を短縮できることなどが背景にあるとみられる。また、「eKワゴン」「eKスペース」、日産向けの「デイズ」「デイズルークス」の軽4車種では、法令違反の方法で測定したデータをさらに意図的に操作して燃費試験を実施する国に提出し、燃費の性能を良く見せるように改ざんしていた。

 (白木真紀 取材協力:宮崎亜巳 編集:吉瀬邦彦)

[東京 11日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送米GDP、第1四半期+1.6%に鈍化 2年ぶり

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中