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北東アジア

迎撃ミサイル防衛に潜む限界

2016年4月19日(火)17時16分
ロバート・E・ケリー(本誌コラムニスト)

 そのような軍事力に勝ることができない北朝鮮(と中国)にとって、安価な無人の空軍力は魅力的な選択肢だ。

 アメリカと日本、そして特に韓国にとって、ミサイルとドローンの群れに対する防衛は高くつく。米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)は1セットで約8億ドル。韓国の軍事予算の約2%に相当する。

【参考記事】いざとなれば、中朝戦争も――創設したロケット軍に立ちはだかるTHAAD

 専門家によれば北朝鮮は10年以内に、年間10基以上の核兵器を製造できるようになる。北朝鮮がミサイルや核兵器を大量生産するようになれば、攻撃と防衛のバランスを保つコストは爆発的に増えるだろう。

 しかも、都市や空母を確実に守るためには、ミサイルの迎撃は100%成功しなければならない。それに対し攻撃側は、1発でも標的に届けば甚大な被害を与えることができる。

 過去にロケット弾や短距離ミサイルの迎撃に成功した例はあるが、北朝鮮が開発しているような大型ロケットを撃ち落とした例はない。数百、数千のミサイルやドローンにも、大規模な軍事衝突が起きて日米の船舶や基地が攻撃された場合も、従来の迎撃システムでは限界がある。

 懸念されるのは、防衛戦略の費用がかさみ、その効果に疑問が生じ始めたときのことだ。そうなれば、先制攻撃が、特に北朝鮮のミサイル発射施設に対する先制攻撃が魅力的な選択肢として浮上しかねない。

[2016年4月12日号掲載]

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