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核開発

少数民族の土地が「死の砂漠」に──中国を抑止できない核サミット

2016年3月31日(木)19時43分
楊海英(本誌コラムニスト)

 国営221工場で製造した原子爆弾は崑崙(こんろん)山脈を越えて新疆ウイグル自治区東部のロプノール砂漠に運ばれ、64年10月16日に爆発した。

 研究によると、ロプノールで核実験は40数回にも達した。その結果、この地のウイグル人は核汚染に侵され、十数万に上る死者が出たとの報告もある。ロプノールは紀元前からシルクロードの要衝として栄えた楼蘭王国で有名な地だが、中国の核実験により名実ともに「死の砂漠」と化した。

 中国がチベット自治区で核実験を繰り返してきた事実も、チベット仏教の指導者ダライ・ラマ14世率いるインドの亡命政権によって度々指摘されてきた。ノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマは「世界の屋根」であるチベット高原の非核化を提案したものの、中国に無視されたままだ。

【参考記事】中国「輪廻転生廃止は許さない」

 さらに今春に入り、中国は南部の貴州省黔南(けんなん)プイ族ミャオ族自治州に天体観測用として、世界最大口径を誇る球面電波望遠鏡の建設に着手した。ミャオ族らの住民約1万人は代々暮らしてきた盆地から強制的に立ち退きを命じられて、故郷は国家の栄光を創出する場に変わった。

 核安全保障サミットで各国は中国に対して、少数民族地域での核汚染と乱暴な宇宙開発基地建設の即時停止を求めるべきではないだろうか。

[2016年4月 5日号掲載]

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