最新記事

米韓合同軍事演習

中国は座視しない!――朝鮮半島問題で王毅外相

2016年3月9日(水)17時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

「戦争になったら、アメリカのせいだ」――環球時報が北朝鮮の声を

「環球時報・軍事」が、「米韓が30万規模のかつてない軍事演習  北朝鮮:もし戦争になったら全てアメリカのせいだ」という見出しの記事を、3月7日に報道した。

「環球時報・軍事」は、自分自身の報道として、まず次のように書いている。

――米韓はこれまでにない規模の合同軍事演習を韓国で行い、韓国軍は全体で65万人しかいない中、米軍1.5万人、韓国軍30万人以上を動員している。「キー・リゾルブ」と「フォール・イーグル」と銘打つ軍事演習が始まったのは、まさに北朝鮮の核実験や長距離弾道ミサイル発射などによって朝鮮半島の緊張が絶え間なく高まっていた時期だ。アメリカの原子力潜水艦、原子力空母、ステルス戦闘機などを演習に参加させている。さらに凶悪なのは、この米韓合同軍事演習は「先制攻撃」「平壌を占領せよ」「斬首作戦」などを含んでいるということである。

 その上で、3月6日付の北朝鮮の「労働新聞」の以下のような報道を転載している(朝鮮は北朝鮮のこと。ママで翻訳する)。

――「勝敗を決する最後の決戦が、いよいよ到来した」。4日、朝鮮最高指導者はその国の軍隊にいつでも核爆弾を発射できる準備をせよと命令した。疑いもなく、誰一人として朝鮮半島で戦争が爆発することを望んではいない。しかし現在、双方は互いに真正面から突き進み、退く意思を見せていない。

「環球時報・軍事」は、さらに韓国、ロシア、アメリカおよびイギリスなど各国メディアの報道を引用した上で、「労働新聞」の以下の報道をさらに転載している。

――米韓は再び朝鮮の最低ラインに挑戦しようとしている。先頭に立って対朝"制裁決議"に挑んだだけでなく、朝鮮に対する前代未聞の規模の侵略的な「キー・リゾルブ」と「フォール・イーグル」という合同軍事演習を強行している。これは対朝鮮の"経済制裁"を軍事攻撃に転換したことを意味し、最終的には朝鮮を侵略する非常に危険な戦争への挑戦(元は朝鮮)である。(中略)アメリカはたえまなく朝鮮半島で大規模軍事演習をし続けているが、これは朝鮮を襲撃する機会を狙っているものと言える。アメリカはあらゆる種類の武器を朝鮮半島の南側の土地の上に配備しているが、これは朝鮮への先制攻撃を意図していることを、遺憾なく暴露している。

 おおむね以上のような引用だが、これは実は中国自身の考えであり、かつ3月8日の王毅外相の発言と深く関連していることがわかる記事がある。

王毅外相発言と北朝鮮発言を一つにした報道

 その記事とは、中国ネット空間のポータルサイトSohuの軍事ページの報道である。タイトルは「王毅、朝鮮半島の一触即発状態に応答:中国は座視しない」だ。このページでは、王毅外相の声を聴くこともできれば、表情を観ることもできる。そこには「人民網」に載っている王毅外相の記者会見における回答とともに、「環球時報・軍事」の記事を載せ、組み合わせて報道している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ブラジルのコーヒー豆輸出、10月は前年比20.4%

ビジネス

リーガルテック投資に新たな波、AIブームで資金調達

ワールド

ナイジェリアでジェノサイド「起きていない」、アフリ

ワールド

世界で新たに数百万人が食糧危機に直面、国連機関が支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中