最新記事

米韓合同軍事演習

中国は座視しない!――朝鮮半島問題で王毅外相

2016年3月9日(水)17時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

朝鮮半島有事を想定して行われる米韓合同軍事演習(写真は去年) Kim Hong-Ji-REUTERS

 3月8日、全人代の外交部記者会見で王毅外相は北朝鮮問題に関して「中国は絶対に座視しない」と強い口調で断言。せっかく対北朝鮮制裁決議に賛同したのに、戦争を誘発する米韓合同軍事演習を行っていると暗示した格好だ。

全人代の記者会見における王毅外相発言

 全人代は初日午前中の全体会議における政府活動報告が終わると、各行政区分に分かれて分科会を開催し政府活動報告に関する審議をそれぞれ行うが、対外的には毎日のようにテーマ別に記者会見を開いて、現状を説明する。内外記者からの質疑応答にも応じるので、なかなかの見ものである。記者の質問は予め指名されていることが多いようだが、それでもこの質疑応答はおもしろい。

【参考記事】台湾問題で習近平が激しい警告――全人代の上海市代表団分科会で

 今回は3月8日午前、中国の外交政策と外交関係問題に関する記者会見で、王毅外相(外交部部長)は韓国のテレビ局記者の質問に答えた。強い語調と厳しい表情だった。この様子は中央テレビ局CCTVでも伝えられたが、中国共産党機関紙のウェブサイト「人民網」が文字化した内容を伝えているので、それを引用したい(リンク先は「人民網」の「両会(全人代と全国政治協商会議、lianghui)」に関する「決勝開局」というページである)。

 以下は質問と応答の概要だ。

韓国テレビ局記者
:中国は歴史上最も厳しいとされている対北朝鮮の安保理決議に賛同しました。ただし問題はどのように執行するかです。中国外交部はたしかに(制裁を)厳守すると承諾しましたが、有効的に履行するために中国はどのような努力をするのか、ということが問題となります。安保理決議では、北朝鮮が鉱物を輸出することを禁止していますが、しかし民生に必要な物資は例外とされています。中国政府は民生と非民生物資を、どのようにして区別しておられるのでしょうか?

王毅外相


 中国は安保理常任理事国として責任があると同時に執行能力も持っています。民生の概念に関してですが、これは誰もが認識を共有しているものだと思います。中国は安保理決議を執行するに当たり、当然のことながら客観的かつ公正な態度で臨み、必要な評価と認定と監督を行ないます。(国連安保理)2270号決議は制裁を含んでいるだけでなく、六カ国協議を再び申し込むことを含んでいるという事実を忘れてはなりません。関係各方面が、朝鮮半島の緊張を高めるような、いかなる行動をも避けるよう私はここに強く要求します。対話こそが問題を根本的に解決する道なのです。

 だというのに、朝鮮半島情勢は目下、一触即発の局面にあり、戦火の敵意に満ち満ちています。もし、この緊張状況が増し、コントロールを失ったとすれば、全ての関係者には災難が降りかかってくるでしょう。

 朝鮮半島の最大の隣国として、中国は朝鮮半島の安定が根本的に破壊されるのを座視するわけにはいかないのです。中国の安全と利益がいわれなく損なわれるのを、中国が座視することは絶対にない!

 われわれは各方面の関係者が理性的に抑制し、矛盾を激化させないことを望む!

【参考記事】いざとなれば、中朝戦争も――創設したロケット軍に立ちはだかる

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州企業、第2四半期は0.7%減益へ=LSEG

ワールド

米、ブラジルの貿易慣行巡り調査開始 トランプ氏指示

ビジネス

中国、アステラス製薬社員に懲役3年6月=報道

ビジネス

午前の日経平均は小反落、不透明感で主力株は売り買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 5
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 6
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 7
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 8
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中