最新記事

世界情勢入門

【地図で読む】18歳以下の「子供兵士」は世界に約25万人いる

基本的な権利が守られていない子供だけでなく、戦闘に参加させられている子供も少なくないことが地図から読み取れる

2015年11月3日(火)17時05分

 例えば、テロ組織のISIS(自称イスラム国、別名ISIL)はイラクとシリアにまたがる地域を支配し、シリア難民はヨーロッパだけでなく、隣国のトルコ、レバノン、ヨルダンにも多く逃れている。例えば、米軍の駆逐艦派遣により米中の緊張が高まっているのは南シナ海で、そこでは中国以外にも、ブルネイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムが領有権を主張している。

 そういったニュースを聞いても、ピンとこない人は少なくないだろう。シリアは中東のどのあたりにある? 南シナ海はどこからどこまでを指す? 日々流れてくるニュースは膨大だし、世界はあまりに複雑だ。いかに大切でも、「世界の今」を理解するのは簡単ではない。

 そんなときに役立つのが、地図だ――。フランスの人気TV番組から生まれた『最新 地図で読む世界情勢 これだけは知っておきたい世界のこと』(鳥取絹子訳、CCCメディアハウス)は、その名のとおり、地図を軸に据えた入門書。フランス地政学の第一人者であるジャン=クリストフ・ヴィクトルと、高校(リセ)の地理・歴史教師であるドミニク・フシャールおよびカトリーヌ・バリシュニコフが、美しい地図と写真でわかりやすく解説している。

 移民や難民、貧困ライン、温室効果ガス、ジェネリック医薬品、スラム街、デジタル・ディバイド、多国籍企業、マイクロクレジット、生物多様性......。「世界のしくみがひと目でわかる!」と謳い、50以上の地図を収録した本書から、5つのテーマを抜粋し、5回に分けて掲載する。

<*下の画像をクリックするとAmazonのサイトに繋がります>


『最新 地図で読む世界情勢
 ――これだけは知っておきたい世界のこと』
 ジャン=クリストフ・ヴィクトル、ドミニク・フシャール、
 カトリーヌ・バリシュニコフ 著
 鳥取絹子 訳
 CCCメディアハウス

※第1回【地図で読む】サッカーもジーンズも、グローバル化でこう変わった:はこちら

◇ ◇ ◇


《1人の子供の1粒の涙は、何をもってしても償つぐなえない》――フョードル・ドストエフスキー[19世紀のロシアの小説家]

<上の地図 世界の子供兵士
18 歳以下で軍または武装組織に所属し、直接または間接的に戦闘に参加する兵士を子供兵士と呼ぶ。世界では約25 万人おり、うち3分の1以上がアフリカだ。アジアでは、ミャンマーが5万人ほどの子供兵士を雇っていると言われ、この数は子供兵士のいる国では世界一である。

子供にも権利がある

 1989 年、世界の多くの国の指導者が集まった第84 回国連総会で、18 歳未満の子供たちは、世界を通して、紛争や暴力のいちばんの犠牲者であることが認められた。その国連総会では、子供たちはとくに保護されなければならないことが採択され、そのための条約「子供の権利条約」が成立した。これは子供の権利を明言し、署名各国(アメリカとソマリアだけが署名しなかった)にそれを守ることを義務づけるものだ。それによって、子供たちは自分たちに認められた権利を主張することができる。

 ヨーロッパでは30 の国が、子供なら誰でも連絡して相談できる「子供の権利擁護機関」を設置している。しかし、外国から1人で来た子供や、不法滞在の両親の子供など、一部の子供たちに対して法律は必ずしも適用されておらず、その権利が守られないこともある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィリピン大統領、台湾有事巡る発言で中国が「誤解」

ビジネス

トランプ氏、中国に米国産大豆購入拡大を要望 「早急

ビジネス

アングル:欧州の古い発電所、データセンター転換に活

ワールド

豪もパレスチナ国家承認へ、9月国連総会で イスラエ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 2
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 3
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋肉は「光る電球」だった
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 7
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中