最新記事

旧ソ連

ウクライナ危機を理解する3つの質問

デモ隊と治安部隊の衝突が激化するウクライナを救うために欧米諸国がすべきこととは

2014年2月20日(木)17時13分
ダン・ペレシュク

内戦の足音 キエフの独立広場で勃発した衝突で少なくとも26人が死亡(2月19日) Vasily Fedosenko-Reuters

 ウクライナの首都キエフで2月18日朝に始まったデモ隊と治安部隊の衝突は、双方に少なくとも26人の死者が出る大惨事に発展。ウクライナは今や、ロシアからの独立を果たした1991年以降最大の危機に陥っている。

 衝突の舞台となったキエフ中心部の独立広場では、3カ月ほど前から民主化とEU加盟を求める反政府デモが行われてきた。だが当初、明るく平和的なムードに満ちていた抗議デモは今や、治安部隊に武力で抑えつけられ、混沌を極めている。

 市民の間には内戦勃発への恐怖が広がっている。19日にはビクトル・ヤヌコビッチ大統領が反体制派の指導者らと「停戦」で合意し、流血を終わらせるための「交渉」に入ったと発表されたが、衝突が止む気配はない。

■なぜこんな事態に至ってしまったのか?

 ヤヌコビッチ政権はEUとの政治経済的関係を深めるため、EU加盟の前段となる「連合協定」の締結に向けて着々と準備を進めていた。ところが昨年11月、突如として親EU路線を撤回し、旧宗主国であるロシアに急接近。これに抗議して、昨年11月に大規模な反政府デモが勃発した。警察や治安部隊が介入するにつれて、デモはますますその規模と過激さを増していった。

■これは内戦なの?

 現時点では、いわゆる「内戦」には至っていないが、その予兆はある。ウクライナは長年、言語的にも文化的にも歴史的にも2つに分断されてきた。1つは、ウクライナ語を話し、ロシアの影響が薄い西部。もう一方は長年、ロシアの支配下に置かれ、ロシア語が使われる東部だ。ウクライナがかかえる社会的、政治的課題の多くの部分が、この分断に根差している。

 東部地域ではヤヌコビッチの親ロシア路線を支持する声が強い。彼らに言わせれば、反政府デモ隊は過激なナショナリストで、民主的に選出された政府を倒そうとしている、ということになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中