最新記事

テクノロジー

ドイツの技術力はオリンピックを制するか

BMWがアメリカ代表のそりを開発。軽量化と小型化を追求したマシンで優勝を狙う

2014年2月18日(火)16時03分
ジェーソン・オーバードーフ

昨年12月に故郷のユタ州で行われたW杯で優勝したホルコム(前) JIM URQUHART-USA TODAY SPORTSーREUTERS

 ロシアで開催中のソチ冬季五輪だが、縁の下でスポーツエンジニアとして金メダル級の貢献をしている国がある。ドイツだ。注目してほしい競技はボブスレー。特に男子2人乗り競技のアメリカ代表が乗る「マシン」から目を離さないでほしい。

 そのそりを開発したのは、BMW。小型化と滑りの良さを極限まで追求した。これに乗るパイロットのスティーブン・ホルコムとブレーカー役のスティーブン・ラングトンは、金メダルの有力候補だ。

「あまりに効率的な設計だから、小さ過ぎると思われるかもしれない」と、BMWの開発デザインチームを率いたマイケル・スカリーは言う。

 ボブスレー競技ではそりの性能が勝敗を大きく左右する。夏季五輪が純粋にアスリートの技能を競う場ならば、冬季五輪はスポーツエンジニアたちの技術力の品評会ともいえる。

 ドイツがボブスレーで表彰台の常連なのは、その技術力の高さからだろう。ドイツ代表は、男子4人乗りでは06年のトリノ大会まで4連覇、男子2人乗りでは10年のバンクーバー大会まで3連覇を果たしている。一方で、アメリカチームは2人乗りでは36年以降、金メダルから遠ざかっている。そこで今回、アメリカチームはホルコムをBMW製のそりに乗せることにした。

 五輪におけるドイツの技術力を支えているのは、ベルリンにある「スポーツ装備開発研究所」という小さな施設だ。国からの助成のもと、技術者たちがボブスレーやスピードスケート、リュージュ競技のための技術開発に励んでいる。

電気自動車の技術を応用

 スカリーによれば、BMWでボブスレーのそりを開発したのは、レーシングカーの開発を学んだ技術者たちだ。彼らは最初の試作品を完成させるまでに、69回も作っては壊しを繰り返した。できた試作品で実際の競技環境を再現したテストを行った後、さらに78回の改良を繰り返したという。

 そりの軽量化には、BMWの電気自動車の軽量化用に開発された特殊な炭素繊維素材が使われた。2人乗りボブスレーのそりの重量は規則で170キロ以上と決められていることを考えると、なぜ軽量化が必要なのか不思議に思えるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中