最新記事

中東情勢

原油市場はシリア攻撃に反対!

シリア攻撃の代わりにアメリカには「供給ショック」が落ちるかもしれない

2013年9月4日(水)16時47分
マシュー・イグレシアス

今回も無視? シリア情勢で動きが激しくなった原油市場だが政治家は気にも留めない Chip East-Reuters

 イギリス議会がシリアへの軍事介入を否決した後、原油価格が下がり始めた。前日までの数日間は、戦争が始まるという噂で過去2年で最高値を記録するほど跳ね上がっていたのに。

 中東情勢が不安定になるとたいてい原油価格が話題にのぼる。だが正直言って、政治家は原油市場の動きをあまり直視したがらないようだ。

 今回もそうだ。シリア攻撃は地域を安定させるどころか不安定にする――こうした原油の動きは少なくとも、政治的にはタカ派でもハト派でもないが多くの金を原油に賭けている人々がどう思うかを総合した市場が発するしごくまっとうな指標の一つだ。

 もっと正確に言えば、シリア攻撃はアメリカ経済に深刻な影響を与えることになるかもしれない。昨今の原油市場の動きにはその兆しが見える。原油価格の上昇は米国経済には悪い供給ショックをもたらす。あらゆるコストが上がり、利益は削られ、雇用状況は再び悪化して、実質賃金も下がるかもしれない。

 原油価格の安定が戦争の是非を決める決定的な要素というつもりはない。実際、原油とは何ら関係のないところで爆撃をしないほうがいい理由は他にもある。

 ただアメリカ議会のタカ派は、シリア攻撃がアメリカ経済におよぼす潜在的な影響にちゃんと目を向けるべきだ。もちろん、予想される原油市場の先行きについてもだ。22のアラブ諸国・機構で構成されるアラブ連盟は、シリア攻撃が地域に政治的な不安定をもたらすと考えている。原油市場も同じ考えのようだ。

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ネタニヤフ氏、イラン核問題巡りトランプ氏と協議へ 

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を

ワールド

ロ、米のカリブ海での行動に懸念表明 ベネズエラ外相

ワールド

ベネズエラ原油輸出減速か、米のタンカー拿捕受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中