最新記事

イタリア

懲りないベルルスコーニの復活大作戦

2013年3月28日(木)13時01分
バービー・ラッツァ・ナドー(ローマ)

露出度はナンバーワン

 笑ってしまいそうな話だが、景気低迷と自身の相次ぐスキャンダルで11年に退陣に追い込まれたベルルスコーニが、有権者のご機嫌を取って権力の座に返り咲く可能性は確かにある。先月の世論調査ではベルルスコーニ率いる中道右派政党・自由国民党の支持率は26・6%で、ベルサニの民主党の34・1%を追っている。3番手はお笑い芸人ベッペ・グリッロ率いる「五つ星運動」の17・2%だが、こちらはもっぱら既成政党への批判票とみられている。

 マリオ・モンティ現首相の中道連合は緊縮策の不人気がたたって12・8%と最下位だ。モンティは先月、ベルルスコーニは「先導してネズミの群れを川に落としたハーメルンの笛吹き男」で「既に国民を3度だました」と言って、大風呂敷を広げていると暗に批判した。

 しかし、そんな高飛車な物言いでは、国民がベルルスコーニについていくのを止められないかもしれない。06年の選挙ではベルルスコーニは所有するテレビ局を中心に1カ月間重点的に選挙キャンペーンを展開し、支持率を上昇させた。今回も昨年12月の出馬表明以来、50を超えるラジオやテレビ番組の出演に60時間以上を費やしている。ベルサニが同じ時期にラジオやテレビに出演した時間はその半分にも満たない。

 ベルサニとモンティは共にEU(欧州連合)の路線に従ってイタリア経済を軌道に乗せるべく緊縮路線継続を主張している。しかしベルルスコーニの選挙公約のほうが有権者には受けている。例えばモンティが復活させた一般住宅の固定資産税を再び撤廃する、といった公約だ。

セールスの腕は一流だが

 昨年10月に脱税事件で有罪判決を受けたばかりとあって、ベルルスコーニは脱税にも甘いと見られている。モンティ政権下で容赦ない追徴課税を受けている多くのイタリア人にとっては魅力的だろう。

「ベルルスコーニは不死身だ」と、かつての盟友で現在はモンティの中道連合に加わっているピエル・フェルディナンド・カジーニは先月、外国人記者協会で報道陣に語った。「ベルルスコーニは腕利きのセールスマンだ。選挙運動にかけては右に出る者がいない。その手腕は認めるべきだ」

 手腕があるかどうかはともかく、奇跡でも起きない限りベルルスコーニはベルサニに僅差でも勝てないだろう。土壇場で中道左派候補がモンティと組めばなおさらだ。ベルルスコーニがイタリアの舵取り役に返り咲くのを阻止するには、そうしておくのが得策かもしれない。さもないと議会での連立工作が必要になる。

「今回は十分返り咲きを狙えるとは言い切れない」とSWGのマウリツィオ・ペッサト副会長は語った。「ベルルスコーニの信用はガタ落ちしている。(僅差で敗れた)06年の選挙前よりもひどい。ベルルスコーニ政権が11年に犯した失敗と個人的なスキャンダルのせいだ」

 たとえ返り咲きは果たせなくても、この分ではベルルスコーニが議会で大きな影響力を持つのは確実だ。ほかの誰が首相になろうと、政治の実権を握り続けるには十分だろう。

[2013年2月12日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:米株で注目される割安な中小銘柄、リスク回

ワールド

サウジが新たなシリア向け大規模投資計画、エネルギー

ワールド

ベネズエラ、ノーベル賞マチャド氏の盟友ら釈放 米国

ワールド

米地裁、NY主要トンネル事業巡る資金凍結を解除 政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 5
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 6
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 7
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 8
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 9
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 10
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中