最新記事

ホルムズ海峡

イランが企む「やらせ」原油流出事故

ホルムズ海峡で意図的にタンカーを座礁させ、欧米から経済制裁の解除を引き出したいイランの胸算用

2012年10月16日(火)16時13分
ジェシカ・フェラン

海の要衝 原油海上輸送の5分の1を担うホルムズ海峡 Raheb Homavandi-Reuters

 欧米諸国による経済制裁に苦しむイランが、報復としてホルムズ海峡に意図的に原油を流出させる計画を進めている──。ドイツのニュース週刊誌シュピーゲルのこの報道は、イランの極秘文書を入手したという西側の諜報当局の情報に基づくもの。現実になれば、原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡が利用できなくなるうえ、深刻な環境破壊を引き起こすことになる。

 計画には「澱んだ水」というコードネームが付けられており、イランの超大型タンカーをホルムズ海峡で座礁させて原油を流出させると、同誌は報じている。


 イランの狙いは、ホルムズ海峡を汚染することで国際的に重要な原油輸送ルートを一時的に封鎖させ、イランに敵対的なアラブ諸国に「罰」を与えること、そして大規模な水質浄化作業に際して欧米諸国がイランが協力せざるを得ない状況を作ることのようだ。そうすることで、対イラン経済制裁を一時的に解除させられるかもしれない。


EUの新たな経済制裁が追い打ち

 記事によれば、計画を立てたのはイラン革命防衛隊(IRGC)とイラン海軍だが、実行に踏み切るかどうかの判断は最高指導者アリ・ハメネイ師に委ねられている。

 ホルムズ海峡は世界の原油海上輸送の5分の1近くを担う要所。イランは昨年来、欧米の経済制裁への対抗装置としてたびたびホルムズ海峡を封鎖すると警告。その動きを阻止するため、アメリカはヘリや無人潜水艇、掃海挺などを投入してペルシャ湾の軍備を増強してきた。

 一方、EU(欧州連合)は10月15日、核開発を進めるイランに対する追加制裁を決定。EUの金融機関がイランの金融機関と取引することが新たに禁じられるほか、イラン産ガスの輸入禁止も盛り込まれている。

 EUは7月にすでにイラン原油の全面禁輸に踏み切っており、これがイランの通貨リアルが対ドルで過去最安値を記録した一因となっている。
  
 シュピーゲル誌は、「澱んだ水」計画が実在するなら、それは経済的孤立の深まりにイラン政府が追い詰められていることの証拠だと指摘している。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、台湾への武器売却承認 ハイマースなど過去最大の

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電

ワールド

中国、海南島で自由貿易実験開始 中堅国並み1130
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中