最新記事

パキスタン

タリバンが暗殺したがった14歳少女

女だてらに学校へ行きたがったというだけで少女を撃ち殺そうとするタリバンの暗愚

2012年10月10日(水)16時23分
リジー・トメイ

14歳で活動家 女子教育の必要性や子供の権利保護を訴えて重傷を負ったマララ・ユサフザイ Reuters

 パキスタンで10月9日、14歳の少女が頭部に銃撃を受けて重傷を負う事件が起きた。被害者のマララ・ユサフザイは、勇気あるタリバン批判で世界に知られていた。その知名度ゆえに、大きな代償を払うことになってしまった。

 マララは彼女の父親と並んで、女子教育の必要性を世界に向けて熱心に訴えていた。彼女たちが暮らすのはパキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州のスワト渓谷。政府の掃討作戦にもかかわらず、イスラム武装勢力タリバンが抑圧的な存在感を保ち続けている。そうした地域においては、ユサフザイ父子の評判は自らを危険にさらすものでしかなかった。

 マララはスクールバスに乗って学校から帰ろうとするところを、あごひげを生やした男に襲撃された。「パキスタン・タリバン運動(TTP)」が犯行声明を出しており、彼女は重体のままペシャワルの病院に入院している。

 TTPの報道官アフサヌッラー・アフサンは、「これは新たな『反道徳的行為』であり、我々はこれを終わらせなければならない」とAP通信に語った。さらにエクスプレス・トリビューンの取材に対しても、マララが生き伸びれば再び彼女を襲うだろうと警告している。


フェイスブックでは自らを「政治家」と

 ニューヨーク・タイムズ紙は09年、当時11歳だったマララを紹介する短編ドキュメンタリー映像を制作しているが、その中で彼女は医者になりたいという夢を語りながら泣き崩れていた。

 映像制作者によれば当時、女子生徒が通う200以上の学校がタリバンによって爆破されていた。「1月15日以降、女子は学校に行ってはならない」――タリバンがそう宣言するラジオ放送も、ドキュメンタリーには出てくる。

 ニューヨーク・タイムズの記者たちは、1月15日を迎えるマララと家族を追っていた。父親はかつて女子のための私立学校を運営しており、マララもそこに通っていた。同紙によれば、そんな彼もタリバンの「レーダー」にかかってしまい、当の1月には脅迫に抗い切れず、学校の閉鎖に追い込まれた。

 同じ09年、マララはBBC(英国放送協会)ウルドゥー語版のウェブサイトに「パキスタン人女子生徒の日記」というブログを開設。グル・マカイというペンネームでタリバン支配下での日常を細かく語り、女性が教育を受ける権利を訴えていた。

 昨年は、パキスタン政府から第1回国家平和賞を贈られ、世界子ども平和賞にもノミネートされていた。

 14歳の彼女はフェイスブック上で自らを「政治家」と表現していた。9日の時点で彼女のページには3400人がファンとして登録されていたが、事件後にその数は6000人以上に跳ね上がった。

 BBCは銃撃事件に対するパキスタン国内での「激しい抗議」を伝えている。ザルダリ大統領やアシュラフ首相をはじめ、政治家からも強い非難の声が上がっているようだ。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

シンガポールの銀行DBS、第4四半期純利益は予想下

ワールド

ロシア軍高官銃撃、容疑者1人ドバイで拘束 共犯の2

ワールド

日経平均が史上最高値、自民大勝で高市トレード再開 

ワールド

台湾、武器供給契約締結期限の延長を米に要請へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 5
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 6
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 7
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 8
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 9
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 10
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中