最新記事

シリア

パイロット亡命はアサド政権の末期症状か

シリア空軍大佐がミグ21に乗ってヨルダンへ亡命。前代未聞の出来事が意味するものは?

2012年6月22日(金)16時36分
ルーク・ブラウン

始まった離反 シリアから亡命した空軍パイロットを支持する人々(ヨルダンの首都アンマンにあるシリア大使館前で) Ali Jarekji-Reuters

 シリア空軍のパイロットがヨルダン北部にある空軍基地に戦闘機を着陸させ、亡命を求めた。昨年3月にバシャル・アサド大統領に対する民衆蜂起が始まって以来、空軍のパイロットが亡命するのは初めてとみられている。

 BBCによれば、パイロットは21日の朝、ロシア製のミグ21戦闘機でシリア国境に近いヨルダン北部マフラクにあるキング・フセイン空軍基地に着陸した。名前はハッサン・ミレイ・ハマデ大佐だという。ヨルダン当局者がBBCに語ったところでは、彼はシリアの首都ダマスカスの北東にあるドメイル空軍基地から飛び立った。

シリア・ヨルダン間の緊張が高まる

 シリアは数週間前まで空軍をほとんど動員していなかった、とニューヨーク・タイムズは報じている。政府は地上における支配権を失っている、という印象を与えたくなかったからだ。戦闘機を飛ばせば、欧米諸国から飛行禁止区域の設定を求められかねない。それに、空軍パイロットが亡命する心配もあった。ハマデもそうだがパイロットには、反アサド政権の主体となっている国内多数派のイスラム教スンニ派が多い(アサドを始め、政権中枢にいるのはアラウィ派)。

 シリアとヨルダンは主要貿易相手国として、平時と変わらない通商関係を維持しようとしてきた。しかし英ガーディアン紙によれば、今回の亡命問題で両国間の緊張が高まりそうだ。シリア政府は、ヨルダン政府がシリアの反政府勢力に武器を供給していると非難している。一方、ヨルダンのアブドラ国王は公の場で2回ほど、アサド政権の正当性に疑問を投げかけている。

 ヨルダンは、シリアからの避難民約12万5000人を受け入れている。そのうち警察や軍出身者は数百人。彼らの送還を、シリア側は求めている。

From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン議会、IAEAとの協力停止法案承認 査察など

ワールド

英、戦術核搭載可能な戦闘機12機調達へ 最新鋭ステ

ワールド

イラン核計画「中核部分は破壊されず」、米情報機関が

ワールド

NY市長民主党予備選、33歳左派候補が勝利へ クオ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係・仕事で後悔しないために
  • 4
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 5
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 6
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 7
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 8
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 9
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 10
    「温暖化だけじゃない」 スイス・ブラッテン村を破壊し…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中