最新記事

シリア

贅沢で現実逃避?アサド大統領夫人に買い物禁止令

中東に欧米的な価値観をもたらす女性と期待されたアスマだが、今は国民を虐殺する夫アサドの言いなりに

2012年3月22日(木)17時22分
プリヤンカ・ボガーニ

期待はずれ アサド大統領の妻アスマ(左)は、米投資銀行出身のイギリス人 Andreas Manolis-Reuters

 反体制派への弾圧を続けるシリア政府への圧力を強めるため、EU(欧州連合)は意外な人物に狙いを定めた。バシャル・アサド大統領の妻アスマだ。

 EUは彼女に対し、EU諸国への渡航やEU域内での買い物を禁じる制裁措置を講じる予定だ。

 イギリスで生まれ育ち、JPモルガンの投資銀行部門で働いた経歴もあるアスマは、華やかで欧米に通じる価値観をもった女性とみられていた。しかし、本当にそうなのか。現に、1年近くにわたって残忍な弾圧行為を続ける夫をアスマは支持していると、ロイター通信は指摘する。国連によれば、弾圧によってこれまでに少なくとも8000人が死亡した。

 英ガーディアン紙は先週、アスマとバシャルが個人的に送受信したとされる膨大な量の電子メールを入手。自国で起きている残虐行為とは無縁のような、贅沢な生活ぶりを暴露した。

イギリス入国は阻止できない

 同紙によれば、50以上の電子メールがイギリスでのショッピングに関連したもの。ネットショッピングも盛んに行っており、ロンドンの高級ショッピング街チェルシーのブティックやパリの宝石店で何十万ドルも費やしてきたことが明らかになったという。

 アスマへの制裁措置は23日、ベルギーのブリュッセルで行われるEU外相会議で決定され、翌日発効する見通しだ。大統領夫妻以外にも113人が制裁の対象となるほか、38の組織が資産と銀行口座を凍結される。

 ただしアスマの場合、たとえ渡航が禁じられたとしても彼女がイギリスの市民権を放棄しない限り、同国への入国を阻止することはできない。

 シリアで弾圧が始まって以来、一度だけ声明の中でアスマはこう述べている。「大統領はある派閥の大統領ではなく、シリアの大統領だ。私は大統領夫人として彼の役割を支持します」

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル貿易黒字、10月は予想上回る大幅増 主要品

ワールド

インドのサービスPMI、10月は5カ月ぶり低水準 

ビジネス

実質消費支出9月は+1.8%、5カ月連続増 自動車

ワールド

カザフスタン、アブラハム合意に参加 トランプ氏が発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中