最新記事

エネルギー

債務危機イタリアを襲う寒波とガス不足

大寒波の欧州を悩ますロシアの天然ガス輸出制限が、ガスの90%を輸入に頼るイタリアを直撃

2012年2月7日(火)16時30分
サマンサ・スタインバーン

名所も閉鎖 86年以来の本格的な降雪があったローマ Gabriele Forzano-Reuters

 1月末から記録的な大寒波に襲われている欧州では、暖房用燃料として天然ガスの需要が急増している。ところが、各国の頼みの綱であるロシアが対欧州輸出を削減。ロシア政府系の天然ガス・石油大手ガスプロムは、寒波の影響で国内でも例年以上に家庭用・産業用ガスの需要が高まっているためとしている。

 イタリアのエネルギー会社ENIによれば、ロシアからイタリアへのガス供給量は通常より約20%も減っているという。厳しい寒さのため欧州全土では300人以上の死者が出ているが、イタリアでもこれまでに17人が死亡。異例の積雪があったローマではコロッセオ(円形闘技場)やフォロ・ロマーノなどの観光名所も閉鎖された、とBBCは報じた。

 イタリア政府は緊急対策を講じ、これを乗り切ろうとしている。経済発展相は2月6日、産業界へのガス供給を一時的に削減することを発表。対象となるのは、通常は割安なガス料金を払う代わりに、緊急事態が起きたら最初に供給をカットされる契約を結んでいる企業だ。

 ロイターによれば、ガス火力発電所の発電量を減らし、その分を埋め合わせるために石油火力発電所をいくつか稼動させる、と政府高官らは述べている。

 イタリア政府の計画に対して、産業界からは不満の声が上がる。「まず最初に企業への供給を減らすというのは、納得できない。利用可能な備蓄分の放出を優先すべきではないか」と、エネルギー消費の多い企業300社の協議会「ガスインテンシブ」のパオロ・クリッチ会長は言う。
 
 ロイターは次のように報じている。


 イタリアは2010年に約780億立方メートルのガスを消費したが、その90%を輸入に頼っている。約220億立方メートルをロシアから、約250億立方メートルをアルジェリアから輸入している。


GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、3年間で6兆元追加調達も 特別国債発行で景気

ワールド

マレーシア国営石油ペトロナス、南シナ海で探査継続へ

ビジネス

競合他社の買収に関心ない─ステランティス会長=報道

ワールド

中国軍事演習、153機の活動確認と台湾 過去最多
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「メーガン・マークルのよう」...キャサリン妃の動画に対する、アメリカとイギリスの温度差
  • 2
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思っていたが......
  • 3
    性的人身売買で逮捕のショーン・コムズ...ジャスティン・ビーバーとの過去映像が「トラウマ的」と話題
  • 4
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 5
    42の日本の凶悪事件を「生んだ家」を丁寧に取材...和…
  • 6
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 7
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 8
    冷たすぎる受け答えに取材者も困惑...アン・ハサウェ…
  • 9
    「コメント見なきゃいいんですよ、林さん」和歌山カ…
  • 10
    ビタミンD、マルチビタミン、マグネシウム...サプリ…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 3
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 5
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思…
  • 6
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 7
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 8
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設…
  • 9
    「メーガン・マークルのよう」...キャサリン妃の動画…
  • 10
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 4
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 5
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 6
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 7
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 8
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中