最新記事

アジア

中国をにらむ新「米豪同盟」の存在感

かつて米軍が日本軍と戦うために利用したダーウィンに海兵隊基地をつくるオバマの思惑

2011年11月17日(木)15時47分
ハンナ・イングバー

同盟強化 オバマ大統領はギラード首相との記者会見で米軍の存在感を見せつけた(16日) Jason Reed-Reuters

 バラク・オバマ米大統領は16日、初訪問したオーストラリアで北部ダーウィンをアジアにおける米軍の新たな中心地にすると発表。「アメリカはアジア太平洋地域全体への関与をさらに強めていく」と語った。オバマとオーストラリアのジュリア・ギラード首相によれば、アメリカはオーストラリアに最終的に2500人の海兵隊員を派遣することになる。

 この動きは台頭する中国をにらんだ取り組みだが、ニューヨーク・タイムズ紙によればアジアでアメリカの影響力と力を取り戻したいオバマの熱意を反映している。オーストラリアに海兵隊を駐留させるのは、アメリカがこの地域に今後も関わっていくことをアジア各国に示す意図ゆえだ。

「アメリカは中国に対し、自分たちがまだ圧倒的で、もし何か大きな問題が起きても勝利する力があると示す必要がある」と、外交問題専門家でシンガポール国立大学客員教授のホアン・ジンは言う。「先手必勝だ」

 ダーウィン基地には象徴的な意味もある。米軍が第2次大戦当時、日本から太平洋を奪い返す反攻の起点として利用した場所だからだ。ただ海兵隊は災害支援などでも活躍するだろうと、シドニー・モーニング・ヘラルド紙は伝えている。

 オバマは17日に2時間ほどダーウィンを訪問する予定で、地元警察はかつてない規模の警戒態勢をとっていると、地元テレビ局のABC(オーストラリア放送委員会)は報じている。グローバル・ポストのオーストラリア特派員フレヤ・ピターセンによれば、オーストラリア人はオバマの訪問を大歓迎している。


 シドニー・モーニング・ヘラルド紙の電子版は、オバマが女生徒とハグする写真を載せ、こう見出しをつけた。「POTUS(President of the United States、米大統領)は愛されている」


 オバマは日本軍によってフィリピンから追い出され、ダーウィンからの反攻で太平洋の覇権を取り戻したダグラス・マッカーサーに自分を重ね合わせている......のかもしれない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中