最新記事

アフリカ

帰ってきたソマリア飢饉、驚愕の死亡率

国連は支援団体が安全に活動できるようイスラム過激派と対話中だが、アメリカの対テロ法が支援を阻む

2011年7月21日(木)17時12分
トリスタン・マコネル

衝撃の事実 ソマリア南部の一部では子供の栄養失調率は50%に達する Ismail Taxta-Reuters

 国連は7月20日、21世紀初となる飢饉の発生を宣言した。場所はソマリア南部の2地域。深刻な干ばつと内戦、食料価格の高騰が相まって、多くの人が飢えに苦しんでおり、死亡した人も数万人に上る。

 国連のソマリア人道調整官マーク・ボーデンによれば、飢饉宣言が出された南部のバクールとシェベリ川下流地域の現状は、国連による飢饉の定義以上に深刻で、ソマリアの人口の半数に相当する370万人が危機的状況にある。しかも、飢饉は今後さらに拡大し、ソマリアやエチオピアなどを含む「アフリカの角」の一帯では、干ばつ被害に苦しむ1100万人をめぐる状況は今後さらに悪化するという。

「いま行動を起こさなければ、農作物の不作と感染症の流行によって、飢饉は2カ月以内にソマリア南部の8つの地域すべてに拡大するだろう」と、ボーデンは語った。そして、雨季の10月に雨が降ったとしても、次の収穫があるとされる今年末までは状況が改善する見込みはない、と付け加えた。

繰り返される90年代初頭の悲劇

 子供の急性栄養失調率が30%を超え、1日に1万人に2人が死亡している場合に、国連は飢饉を宣言する。ソマリア南部の一部ではすでに、栄養失調率は50%を超え、死亡率も国連が定める条件の3倍以上。「衝撃的な数字だ」と語るボーデンは、飢饉対策として今後2カ月間だけで3億ドルの援助が必要だと訴えた。
 
「国連の飢饉宣言は世界に対する緊急の警鐘だ」と、イギリスを拠点とする救援支援団体オックスファムの広報官アルン・マクドナルドは言う。「危機は数カ月前から始まっていたが、諸外国の篤志家や各国政府の反応は遅く、不十分だ。救助資金はまだ8億ドルも不足している」

 ヒラリー・クリントン米国務長官は、ソマリア及び、毎日推定3500人のソマリア人難民が流入しているエチオピアやケニアに対して、2800万ドルの追加支援を行うと表明した。

 ソマリアでは、90年代初頭にも飢饉で20万人以上が死亡した過去がある。「現在の(栄養失調)率は、91〜92年と似たような水準だ」と、ボーデンは言う。「今回の飢饉は過去20年間のソマリアで最も深刻な事態だ」

 90年代初頭の危機の際には、アメリカは国連平和維持部隊の一部としてソマリアに介入。米軍ヘリ「ブラックホーク」が首都モガディシュで撃墜され、米兵18人が殺害されるという不名誉な事件につながった。

 ソマリアは今も混乱状態にある。政府は十分に機能しておらず、国際社会の支援を受けた暫定政権と、アルカイダとつながりがある過激派組織アルシャバブの衝突が続いている。

 飢饉が宣言された2つの地域はどちらも、アルシャバブの支配下にある。アルシャバブは09年後半以降、占領地域内に西側諸国の救援団体が立ち入るのを禁じてきた。今月になって禁止を解除したが、事態はすでに悪化していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏 、 ホルムズ海峡に多くの国が軍艦派遣と

ビジネス

イラン情勢注視続く、FRB金利見通しも焦点=今週の

ワールド

イスラエル、レバノンと数日内に協議へ ヒズボラと戦

ワールド

北朝鮮の金総書記、多連装ロケット砲の発射訓練視察=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 2
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 3
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 4
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 5
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 6
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 7
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 8
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中