最新記事

韓国

ソウルは男尊女卑を脱却する

G20サミットを迎えるソウルのイケメン市長が語る、女性の幸せと先進社会実現のビジョン

2010年11月9日(火)14時08分

若き改革者 ソウル市庁の女性課長も増やすと言う呉(9月2日) Truth Leem-Reuters

 韓国は長年、世界でも有数の男尊女卑社会であり続けてきた。だが首都ソウルの呉世勲(オ・セフン)市長は、そのイメージを変えようとしている。3年前、彼は「女性が幸せな都市(女幸都市)」プロジェクトに着手。ソウルに住む女性たちの生活の質の向上と、政治参加の機会拡大を目的とした一連の政策を打ち出した。今年6月の市長選で再選を果たした呉に、本誌編集主幹リチャード・スミスが話を聞いた。


――「生活の質」プロジェクトの中でも特に胸を張れるものは?

 1つ1つの変化は些細なものに見えるかもしれない。だが、例えば公衆トイレの現状について考えてみてほしい。順番待ちの行列は常に女性用の方が長い。これは男女のトイレの総面積は等しくあるべきと定められているからだが、そのせいで便器の数は女性用の方が少なくなっている。さらに女性の方がトイレにかける時間が長いため、現状は実に非効率的だ。

 だから我々は、女性用をより多く作っている。地下鉄の駅に新たなトイレを作るときも、女性が気軽に利用できるよう安全性と明かりを備えた場所を選んでいる。

――女性に対する雇用拡大も目指しているようだが。

 女性は結婚や出産でキャリアの断絶を余儀なくされる。そのせいで子供が育って親の手を離れても、女性は元のポストに戻ることが難しい。プロジェクトの目的はそうした女性が保有する資格を活用し、雇用主が求める水準の能力を発揮できるよう再教育することだ。

――市職員から反発はあった?

 将来的な望ましい社会の実現には必要なパラダイムシフトだと誰もが理解している。問題点を挙げるなら、(一部の職員が)新しい考えについていけなかったことだ。

 市庁舎では130以上の部署で1万5000人が働いているが、課長以上はほぼ男性だ。男女比はいずれ変わるだろうが、今はまだ(男性職員は)政策をどう変えれば女性に優しい街づくりができるか分かっていなかった。彼らは従来のやり方を続けるばかりだった。

 そこで私は問題に対処するため、職員たちに新しいアイデアを発案するよう命じた。さらに「女性が幸せな都市アドバイザー」という構想も導入した。これは女性の視点を政策に反映させるため、市職員に助言を行うグループだ。

――女幸社会の実現のため、ほかにどんな方法を用いているか。

 マンション建設について見てみよう。設計に際しては、女性が共同住宅やエレベーターに入るときに安全を感じられるようにする必要がある。そのためには、担当者は常に女性を安心させることの重要性を意識しなければならない。だが過去の担当者官僚たちは、必ずしもそう考えてはいなかった。

――女性の政治参加の進展について現状は10点満点で何点?

 およそ半分の5点だ。向上の余地はまだ大いにある。市議会と国会では、すでに女性の参加を促すよう制度が変更された。女性の割合は現在、両方とも20〜30%だ。

――女性職員の割合は増えているというが、中間・上級管理職の女性もすぐに増えると思うか。

 そう思う。10年以内にはそうなるだろう。ここにいる副市長に言わせれば、5年以内に管理職の半分は女性になるそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米CPI、4月は前年比3.4%上昇に鈍化 利下げ期

ビジネス

米小売売上高4月は前月比横ばい、ガソリン高騰で他支

ワールド

スロバキア首相銃撃され「生命の危機」、犯人拘束 動

ビジネス

米金利、現行水準に「もう少し長く」維持する必要=ミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中