最新記事

東アフリカ

共同市場創設が促す「大陸統合」の可能性

ケニア、タンザニア、ルワンダなど5カ国で発足した統一市場は「アフリカ合衆国」の先駆けになるかもしれない

2010年8月26日(木)14時54分
ロバート・ロトバーグ(アフリカ専門家、元ハーバード大学教授)

ルワンダ大統領選の投票へ向かう住民。カガメの再選は明るい兆しだ(8月9日) Finbarr O'Reilly-Reuters

 7月1日に共同市場が発足した東アフリカ共同体。加盟国5カ国(ケニア、タンザニア、ウガンダ、ブルンジ、ルワンダ)は既に域内の関税を撤廃し、12年までに通貨同盟の成立も目指している。さらに15年までには統一政府を設立する計画もあり、実現すれば人口1億3400万人を抱える「国家」の誕生だ。

 各国のGDPの合計は約750億ドルで、今も成長を続けている。共同市場による相乗効果で、外国からの投資増加や域内資源の効果的な配分も期待されている。

 域内では既に資本や労働力の自由な移動が始まっているほか、政治的、経済的な調和を図るため各国の法律を調整中。統一パスポートの発行も始まり、ビザ統一に向けた協議が行われている。

 アフリカ統合に向けた構想は50〜60年代に浮上したが、当時は時期尚早とされた。67〜77年にはウガンダ、タンザニア、ケニアの3カ国で東アフリカ共同体がつくられたが失敗。75年に西アフリカ15カ国で設立した西アフリカ諸国経済共同体も、効果を挙げていない。

 それでも00年を境に、結束を徐々に強めてきた第2の東アフリカ共同体はうまく機能するかもしれない。統合に意欲的なルワンダのカガメ大統領が、8月9日に圧倒的な支持を集め再選されたことは、共同体を後押しする力になる。8月4日にケニアで行われた国民投票で、民主化を促す新憲法が支持されたことも追い風になるだろう。

 将来的にはソマリアやマラウイ、ザンビアなども共同体に加盟する可能性がある。東アフリカ共同体が「アフリカ合衆国」の先駆けになるかもしれない。

[2010年9月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

財政の信認揺らがない限りあらゆる手段使う=経済対策

ビジネス

午後3時のドルは153円後半で上げ一服、前日の急騰

ワールド

米国防長官、アジア各国と会談 安保協力強化で中国け

ワールド

米ロ首脳会談、ウクライナ巡るロシアの強硬姿勢で米が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中