最新記事

アフリカ

ソマリア増派をためらうアフリカ連合

支援することも見捨てることもできないAU諸国のジレンマ

2010年8月16日(月)15時44分
ジェイソン・マクルーア

内戦で窮地に AU首脳会議のためウガンダに到着したソマリア暫定政府のアハメド大統領(中央、7月24日) James Akena-Reuters

 内戦が続くソマリアの未来は、日に日に危うくなっている。7月25〜27日にウガンダで開かれたアフリカ連合(AU)首脳会議では、ソマリアの首都モガディシオに駐留するAUの平和維持活動(PKO)部隊への増派を、ギニアとジブチが約束した。イスラム武装勢力アルシャバブの台頭に危機感を抱いたためだ。

 だがPKOは惨めな結末を迎えるかもしれない。AU加盟国の大半はソマリアを絶望視し、部隊を駐留させること自体が状況を悪化させているのではと危惧し始めた。

 かつてはアフリカの問題をアフリカ自身で解決する手段としてもてはやされたAU部隊だが、各国は派兵にためらいがちだ。シエラレオネ、マラウイ、ガーナ、ナイジェリアなどは、これまで増派を約束しても実行してこなかった。

 アルシャバブは7月11日にウガンダの首都カンパラで連続爆発テロを起こしたが、その目的はソマリアに派兵しているウガンダへの報復だと主張した。AU諸国は派兵すれば次の標的になりかねないと警戒している。

 アルシャバブの思想に共鳴するソマリア人は少ないが、内戦を「ソマリア人対外国人」という構図に見せることで新兵を増やしている。AUの増派はこの構図に説得力を与えることになる。とはいえアルシャバブがソマリアを制圧すれば、見過ごすことはできない。

[2010年8月11日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪中銀、予想通り政策金利据え置き 利上げ急がない姿

ビジネス

香港、IPO申請の質の維持を投資銀行に要請 上場急

ワールド

トランプ政権の風力発電プロジェクト承認停止は無効、

ビジネス

マクロスコープ:青森沖地震、懸念される経済損失 専
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 10
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中